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山の歴史やアイルランドの文化を綴っていきます

林檎の花咲く山里から鎖場連続の【虫倉山】へ!:心優しい『山姥の伝説』が残る土地@長野市中条 May 9, 2019

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ちょっと気になる山がありました。

里山なのに、急登が続き、鎖場が連続する……

山奥のふもとの里には、ヤマンバが鎮座する……

前回の「姨捨山」から「山姥の山」…… 繋がりが良い(笑)

 

ということで、北アルプス登山の良い練習になると思い、白馬からの帰りに車中泊をして、北信地域の旧中条村(現長野市)にある「虫倉山」を登ってきました!

5,000文字越え……少々長いです <(_ _)>

 

Contents

 

虫倉山登山ガイド

3時間ほどで登れる山なので、長野から白馬などに向かう間にちょこっと登ることもできます。周囲におやきの美味しいお店や温泉・宿泊施設もありますし、登山後の観光も楽しそうです。

バリエーションに富んでおり、眺望も良いので、おすすめ里山度は★5つです!

 

『虫倉山』 難易度:★★★☆☆*1 ※コースによっては急登・連続した鎖場あり!

【所在地】〒381-3204 長野県長野市中条御山里 (登山口の不動滝・丸山公園)

【アクセス】虫倉山周辺は周囲に何もない山間部ですので、車での移動を推奨します。長野ICまたは更埴ICより不動滝・丸山公園まで1時間ほど。詳細は「登山口まで」の項を参照。

【山頂標高】1,378m

【登山口標高】979m (不動滝・丸山公園)

【コース距離】4.8km (登り:さるすべりコース、下り:不動滝コース)

【参考コース時間】計3時間40分(休憩含む)

【展望良さ】★★★★☆ (里山から聳える北アルプス北部の眺望が素晴らしい!)

【山域地質】

山域全体に渡って、第三紀鮮新世(500万年前~260万年前)の柵層(しがらみそう)、荒倉山火砕岩部層からなる。荒倉山火砕岩部層の下部は安山岩塊状溶岩など、上部は安山岩塊状溶岩。

だそうですが、実際登ってみると「さるすべりコース」下部は塊状溶岩上部は層状溶岩の印象でした。

「柵層」は、先日登った南方の筑北三山の「小川層」よりも新しい堆積岩主体の地層。柵層も小川層もフォッサマグナの海に堆積した地層からなる。この地域の傾向として、北方ほど新しい堆積物になる。これは南から北へ海が埋め立てられた結果であると考えられている。

虫倉山の安山岩は、このような環境で噴火した(海底)火山によるもの。

説明が長い!長すぎる!スミマセン

 

登山口まで

虫倉山の登山口周辺は、観光開発の進んでいない鄙びた山村にあります。目的地までは、特に県道31号線を過ぎると、見通しの悪い狭い山道を走りますのでご注意ください。

 

虫倉山の山麓長野市中条の太田地区まで

長野市から国道19号線を走り、「笹平」交差点で分岐する県道31号線に入ります。「道の駅中条」付近の観音像から、登山口のある長野市中条の太田地区(ピン部分)までは細く曲がりくねった舗装道路を上がります。

分岐点の詳細は、「参考資料・ウェブサイト」の項目にある「虫倉山登山道コース(中条地区住民自治協議会)」を参照してください(詳細の詳細……出た!たらい回し!スミマセン、登山口までちょっと複雑です。オシエテ、グーグルセンセイ!)

 

県道401号線との合流付近で視界が開け、棚田が広がるのどかな集落になります(田んぼには、水はあまり張られていませんでした)。

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上のガードレールが続く道が県道401号線。右手前が31号線から上がってきた道路。新緑が美しい♪

太田地区から不動滝・丸山公園駐車場までの林道区間

太田地区から登山口のある不動滝・丸山公園までは、細い生活道路や林道になります。

 

県道401号線の登山道口分岐(上の地図ではなく、もう一つ上の地図のピン)では、清潔感のある休憩所が利用できます。トイレやロッカーが設置されており、登山届もここで提出できます(登山口でも登山届ポストがあり提出できます)。

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分岐から民家の間を登る生活道路になります。途中、林檎や八重桜などたくさんの花がきれいに咲いていました。集落を過ぎると車1台が通れるほどの林道になります。

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林道最上部、不動滝前のカーブは砂利道になり沢水が流れています。底を擦らないように(汗)気を付けて横断します。

なおカーブ手前に広場があり、ここに停めたくなりますが、マイクロバスの方向転換の為のものなので駐車しないようお願いします。

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駐車場は写真手前になります(進行方向と逆に撮影)。写真奥はマイクロバス方向転換場

 

この沢水は、すぐ上にある「不動滝」からのものです。

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ここを過ぎると左手に不動滝コース登山口が現れ、舗装道路に戻ります。

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不動滝コース入口でも登山届を提出できます (進行方向と逆向きに撮影)

 

さらに50mほど進むときれいな水洗トイレと水場が設置された駐車場(4, 5台駐車可)に着きます。この駐車場から「さるすべりコース」と「不動滝コース」に進むことができます。

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不動滝・丸山公園の駐車場のきれいなトイレ。外に水道もあり、下山後、顔を洗える!ありがたい! 

 

駐車場の先にも砂利道が続き、その先の旧キャンプ場にも駐車できるようです。底を擦りそうだったので行きませんでした(笑)。

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登山コース概要

虫倉山頂上へは5コースが整備されています(★は長野市設定の難易度)。

  1. 不動滝コース★☆☆
  2. 柏鉢城コース★★☆
  3. さるすべりコース★★★
  4. 小虫倉コース★★★
  5. 岩井堂コース★★★

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県道401号線沿いに設置された案内板より

 

5つのうち最もポピュラーなコースは、初心者向けの「1. 不動滝コース」です。

不動滝・丸山公園から2コースを巡ることができるので、今回は登りを上級者コース「3. さるすべりコース」、下りに初心者コース「1. 不動滝コース」を選びました。

登山道は地域の人の手によって、下草刈り・看板設置・危険個所の鎖の整備など、とてもよく整備されていました。

しかし、2014年白馬村震源とする「長野県神城断層地震」によって、上級者コースを中心に崩落箇所があります。崩落した登山道や倒壊したあずま屋など、地域の人々によって修復されていますが、登山道に設置された注意書きをしっかりと守って登ってください。また熊などの野生動物にも気を付けてください。

 

登り★★★ (さるすべりコース、参考タイム:約1時間10分)

不動滝・丸山公園>さるすべりコース連絡ルート(鎖場あり)>三叉路>虫倉神社奥の院鎖場あり)>尾根取り付け鞍部頂上まで鎖場連続、崩落による立ち入り禁止区域あり)>虫倉山頂上

 

下り★☆☆ (不動滝コース、参考タイム:約1時間10分)

虫倉山頂上>あずま屋>稜線三叉路>柏鉢城コース合流点>水場>不動滝・丸山公園

 

※注意※

さるすべりコース」は虫倉神社奥の院から鎖場が目立って多くなります。特に上部ほど痩せ尾根、急登&鎖場になります。さらに足場の目立たない2m程の岩をよじ登るところが一ヶ所あります(手掛かりになる木と鎖はあります)。痩せ尾根転落の危険性が高い(正にさるすべり!)ので、初心者の方は避けた方が良いと思います。里山と侮らないように気を付けてください。

 

登山コース詳細(さるすべりコース、不動滝コース)

登り(さるすべりコース、約1時間10分)

駐車場脇から、さるすべりコースへの連絡ルートが始まります。熊出没の看板が怖い(笑)。

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途中、鎖と木橋があるので気を付けましょう。

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鎖場を抜け新緑の中のほほんと歩いていると、斜面上から

「ガサッッ!」

(((((( ;゚Д゚)))))

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こんな熊はここにはいないけど(笑)

 

カモシカでした。びっくりした~(笑)。

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ちなみに「カモシカスポーツ」は松本市郊外にもあります(笑)。最近知った(グハッ…) 

 

この山に限りませんが、鈴や笛は常に身に着けて登りましょう。北アルプスでクマに2回ほど会ったこと(祖母谷上流部と黒四ダム右岸の沢←通常ボートでしか入れません)がありますが、ほんと緊張しました(涙)……子連れとか特に……

 

落ち着いた後歩いていると、やがて「さるすべりコース」の本道と合流します。

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しばらくは雑木林の中を歩きやすい登りが続きます。

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虫倉神社奥の院を過ぎると……

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本格的な鎖場が出てきます。

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左から巻けそうな気もするけど……

その後、緩斜面と急斜面が繰り返し、

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ちょっと見にくいですが、「さるすべりコース」上部の様子(不動滝コースから撮影)

 

上部ほど痩せ尾根になり高度感が出てきます。

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北アルプス登山のよい準備運動に……(笑) 

 

さるすべりコースの最難所

コース概要の注意事項で述べたように、コース上部には、登山道が途切れ2m程の岩だけになり、一見どこを登るのか分からない箇所がありました(鎖が設置されていますが、それまではしっかりと道がついていたので、一瞬どこを登るのか迷いました)。他に逃げ場がなく岩を登ることになりますが、木と鎖、小さな足場を利用してよじ登ってください。

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難所の上から撮影。鎖が消える辺りからよじ登りました

 

ここを過ぎても気が抜けませんが、頂上まではあと少し!

頂上直下の進入禁止のロープを左に迂回すれば頂上です!

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頂上まで痩せ尾根&急斜面の鎖場が連続します。頂上直下から頂上まで崩落による立ち入り禁止区域があります。

里山レベルを逸脱した登り道の先には……

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里山を従え屏風のように居並ぶ北アルプスの山々。その後ろには槍の穂先が!子槍も!

 

山頂のご褒美(眺望)

ご褒美が待っていました!(後立から反時計回りに。焦点距離約130mm)

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鹿島槍ヶ岳五龍岳(武田菱が見えます)。神々しい……

 

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蓮華岳針ノ木岳爺ヶ岳の南部も)。里山との高度差が凄まじい……

 

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蝶ヶ岳常念岳大天井岳、そして槍! 有明山こんな低いんだ……

 

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先日登った聖山。山また山の中によく見ると集落が点々と……

 

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広大な平原が続く美ヶ原高原と鉢伏山。美ヶ原どんだけ広いの!

 

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美ヶ原高原の左には八ヶ岳連峰。富士山は見えないのかな……?

 

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浅間山。見慣れた形と違う……麓の松代の皆神山がプリンみたい(笑)

 

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百名山の方の四阿山。案外カッコイイ……

 

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草津白根、志賀高原方面。浅間山からこの辺りの山は登ったことないので、いつか登りたい!

 

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高妻山戸隠山妙高山。戸隠はここよりも全然ハードらしい……

 

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ほぼ360度の展望でした!

 

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おまけ:芽吹く前の枝の向こうに、集落がミニチュアのように!見ろ!人がゴニョゴニョ

 

当日は曇りでしたが、北アルプス方面は晴れていました。冬期はいつも雪雲に隠れていた北アルプス。暖かくなってからは良く晴れています!

白馬方面も見えましたが、木立が少し邪魔でしたので、不動滝コースのあずま屋からの写真を。

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白馬三山(白馬鑓ヶ岳、杓子岳、白馬岳) 。雪形はっきりしてきたかな?

 

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唐松岳、不帰嶮と長大な八方尾根 。スキーシーズンはGWで終わりました

 

なお、山頂は東側が崩落して半分が立ち入り禁止でしたので、十分注意してください。

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以前設置されていた双眼鏡は撤去されていました(立ち入り禁止の看板の左)

 

下から見ると、うぁ、結構崩れてる……

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下り(不動滝コース、約1時間10分)

さるすべりコース」を下るのはチョット……ということで、初心者コースの「不動滝コース」を下りました。こちらはいたって普通の里山コースでした。当コースを登りに使う方は、逆の順番から見てください。

 

頂上からは稜線をしばらく歩きます。

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頂上近くの「一服むしくら」。登りの休憩に良さそうです。

 

10分ほど歩くと分岐点に到達します。左に延びる道に進みましょう。右の道は西北西の飯縄山に続きます。

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不動滝コースは奥に続きます


また10分ほど下るとあずま屋が見えてきます。

このあずま屋は2014年の地震で倒壊したそうです。たしかに以前の虫倉山を紹介したサイトのあずま屋と異なります。立派なあずま屋を再建するのは大変だったでしょうね……地域の人々の虫倉山への愛が伝わります!

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あずま屋からは、白馬三山を中心に後立山連峰が見事に見えます!

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さらに10分ちょっと下ると分岐点。「不動滝コース」は斜面を下ります。稜線上に続く道は「柏鉢城コース」です。

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不動滝まで0分……?よく見ると40分かぁ

雑木林と熊笹の斜面をつづら折り状に下り、金倉坂の看板を過ぎると、じきに沢沿いの道になります。

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沢を渡ると、沢沿いの道になります。

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この沢にはハコネサンショウウオが生息しているそうです 

 

一ヶ所だけ、堰堤の横に鎖があるので気を付けてください。また堰堤上流部は土砂で埋まっており下りれますが、下流への落下には気を付けましょう。

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鎖場から10分も掛からず登山口です。お疲れ様でした!ふぅ~ 

帰りの道で車の底を擦らないように気を付けないと……

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よく整備された登山道でしたが、登山口には以下のような看板が設置されていました。十分に気を付けて虫倉山登山を楽しみましょう!

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おわりに

集落の入り口にある休憩所の前には、小鳥を手に取る女性の像が座っています。

 

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説明によると、この土地に伝わる山姥(やまんば)「大姥様(おおばばさま)」だそうです。各地に伝わる山姥とは異なり、大姥様は子供を愛する心優しい神様だそうです。

この中条地区に住む人々も大姥様の心を受け継ぎ、郷土の山「虫倉山」を大切にしているのでしょうか。

 

大姥様の近くには、林檎の花がきれいに咲いていました。

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大姥様は地域の人々の暮らしをご覧になり、何を思し召されているのでしょうか……

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『絶景の露天風呂、大岡温泉』と『奇々怪々(死語?)、芦ノ尻道祖神』につづく~

 

駄記事書いてたら、10時間経ってた~@@

でもたのし~!

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参考資料・ウェブサイト

*1:★1ピクニックレベル、★3丹沢、★5穂高連峰 ※筆者主観。★1でも油断禁物!