山と愛蘭土 ☘ Sliabh & Éire ☘

山の歴史やアイルランドの文化を綴っていきます

種まき爺さんの『爺ヶ岳』:高山植物の花咲く登山道で、山の成立ちを考えながら。Jul 2, 2019

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長野県大町市大町山岳博物館から西方の山々を見ると、

双耳峰からなる「鹿島槍ヶ岳

長大な稜線がのびる「蓮華岳

北の端に小さく見える「白馬三山」

これら、北アルプス北部を構成する「後立山連峰」(以降、後立と呼びます)の山々が南北に連なり、大町市の美しい景観をつくっています。

 

今回私が登った『爺ヶ岳』は「鹿島槍ヶ岳」の南にあります。

白馬岳から南にのびる後立が西に折れ曲がるポイント、ちょうど突端に「爺ヶ岳」は位置するため、大町市から良く目立つ山です(写真中央の山)。

 

爺ヶ岳』は南峰・中峰・北峰の三つのピークからなります。

一番高いのは中峰(2,670m)ですが、種池山荘から近い南峰(2,660m)も眺めがよく、南峰だけ登る人も多いようです(今回の私みたいに)。

雪解けが始まると二人の「種まき爺さん」の雪形があらわれ、この雪形が山名の由来になっています。

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左の南峰直下の黒い模様二つが「種まき爺さん」の雪形(5月中旬撮影)。

 

左(赤枠)の大きい爺さんが早くあらわれ(3月~5月)、右側(黄枠)の小さい爺さんは5月にあらわれ始めます。

 

7月当初、雪形はもうありませんでした。

しかし、この二人の爺さんがまいたものでしょうか、登山道は高山植物の花々に彩られていました。

 

その高山植物の花が咲く登山道や登山口の沢には、何やら面白い模様が入った石があります。

実はこの爺ヶ岳周辺をつくる石には、火山噴火の謎を解明する鍵が隠されているのでした。

 

※地質の項目が長くなってしまいました。山の成立ちについて興味のある方、お読み頂けると幸いです。 <(_ _)>

 

目次

 

爺ヶ岳高山植物たち

道中にはたくさんの高山植物が咲いており、正直驚きました。

初夏に通いなれた登山道(柏原新道)を歩くのは初めてでした。

今までは高山植物にそれほど興味がなかったとはいえ、もったいないことをしてました……

 

高山植物は、ミヤマキンバイチングルマトリカブトなどメジャーなものくらいしか知りません……

今回は高山植物のポケット図鑑を買ったので頑張って調べてみました!

間違ってたらスミマセン!

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シャクナゲ(奥は扇沢駅と針ノ木雪渓)とミツバオウレン

 

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登山道わきには、至る所にイワカガミが群生していました

 

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ツマトリソウベニバナイチゴ

 

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シラネアオイオオバキスミレ

 

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山桜(ミネザクラ?)とオオカメノキ

 

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ショウジョウバカマチングルマ

 

もう少し遅いと、ニッコウキスゲも見られるそうです(隣村のおばさん談)。

 

こうして挙げてみると、私が確認できたものだけでも、こんなにたくさんの種類の花が咲いていたのは驚きです!

 

爺ヶ岳には、燕岳や常念岳など南の山では数週間前に咲いていたものが咲いており、北の山は咲く時期が遅いようです。

やはり、北アルプス北部は雪が遅くまで残り気温が低いせいでしょうか。(麓から見ると、雪の量は常念山脈後立山連峰では大きく変わります。)

時期をずらして北アルプスの山々を登ると、同じ高山植物を楽しめますね!

 

当日はあいにくの曇り空でしたが、天気の悪い時はライチョウを見る機会が増えると言われています。

爺ヶ岳にもいるのですが、運悪く今回は見かけませんでした。

おそらく、東京から学校登山で100人ほどの男子高校生が来ていたので、元気な彼らに驚いて巣に隠れてしまったのかもしれませんw


爺ヶ岳について

山のグレーディング*1によると、爺ヶ岳中峰(2,670m)は4B*2となります。

今回は種池山荘から一番近い南峰(2,660m)ですので、体力度は4弱といったところでしょうか。

当日はあいにくの天気でしたが、晴れていれば山頂からは剱岳立山連峰鹿島槍ヶ岳をはじめ、北アルプス南部の山々から富士山までを見渡すことができます。

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晴れの爺ヶ岳南峰より。2016年10月撮影。

 

爺ヶ岳は柏原新道から登るのが一般的です。登山口は、立山黒部アルペンルート扇沢駅下の扇沢橋左岸にあります。

周囲には数10台(扇沢駅の有料駐車場を含めれば、100台以上)の駐車スペースがあります。

しかし、夏の最盛期は満車になることが多々あり、気を付けたいところです。

 

柏原新道は、種池山荘*3・冷池山荘*4・新越山荘*5の二代目オーナー柏原正泰さんが、1960年代に開いた登山道です。

最適なルートを見つけるために、木に巻き付けたタオルや手ぬぐいを対岸から見て、修正しながら登山道をつくったそうです。

新道ができるまでは、登山口脇の扇沢の急斜面を詰めて爺ヶ岳に登っていたそうです。柏原新道ができたおかげで、爺ヶ岳北アルプスの中でも非常に登りやすい山になりました。

ですので、私が初心者の方に初めての北アルプスの山を勧める時も、唐松岳または爺ヶ岳を挙げることが多いです。

 

登山道状況(扇沢~種池山荘~爺ヶ岳南峰)

柏原新道(扇沢~種池山荘)

扇沢橋の手前にある登山口から、柏原新道を登り4時間ほどで種池山荘に着きます。

 

登山口には用紙を備え付けた登山ポストはありますが、トイレがありません。ちょっと離れていますが、扇沢駅にトイレと給水場があります。

また、登山口の小屋の張り紙に、冷池・種池・新越山荘ではヘルメットの貸し出しはしていないと告知されていました。

鹿島槍ヶ岳の南峰までは特にヘルメットはいらないと思います。しかし、鹿島槍ヶ岳北峰に行かれる方やそれより先を縦走される方は、鹿島槍南峰ー北峰間や八峰キレットなどに危険個所がありますので、ヘルメットを用意されておくと安心かもしれません。

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右の斜面は崩落の危険があるので、あまり長く立ち止まらないでください。 

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登山口で登山届を提出できます。丁寧な説明が書かれた黄色い看板は、柏原新道の定番!

登山届をポストに投函して登山開始です!

柏原新道は登り始めと種池山荘直下がすこし急登です。

中間部は爺ヶ岳南稜をトラバースするため傾斜は緩く、道もよく整備されて広いので、とても歩きやすいと思います。初心者の方も安心して歩けるでしょう。

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同じようなペースで上がってこられた岐阜の方も、

「初めてだけど、登りやすい道だね」

と仰っていました。

 

ただし、登山道下部のケルン前後と上部のアザミ沢やガラバの雪渓をトラバースの際は注意を要します。

  • ケルン前後は、谷側の崩落に気を付けること。
  • 雪渓のトラバース時は、雪渓末端が薄くなっている為、踏み抜きに気を付けること。
  • 雪渓上には落石が多いので、雪渓上流にも気を配ること。
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山荘近くのガラバ(下の写真)は遅くまで雪が残ります。因みに手前の雪渓の下は石の境目。向こう側は火山岩(主に溶結凝灰岩)、手前は花崗岩

 

柏原新道は爺ヶ岳南稜の西斜面を上がるので、登山道からの眺めは限定的です。

しかし、高度が上がるにつれて視界が開け、蓮華岳針ノ木岳など、後立山連峰南部の山々が見えてきます。

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種池山荘~爺ヶ岳南峰

今回の山行では、ここまで静かな山歩きでしたが、種池山荘近くになると登山客の姿がだんだん増えてきました。

 

そして……


種池山荘まであと少しというところで、爺ヶ岳を見上げると何やら見たことのない突起物がいっぱい……

「ん~、あんなところに木が生えてたっけ?」

よーく目を凝らすと、動いてる……

「にょろにょろ?w」

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一瞬、爺ヶ岳に毛が生えたのかと思いましたw

 

種池山荘に着いてスタッフの方に尋ねると、東京から来た高校生さんたちの姿でした。

天気がすぐれないため、鹿島槍ヶ岳登山の予定を変更して爺ヶ岳にしたんだそうです。

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爺ヶ岳南峰から種池山荘に下山する高校生たち(種池山荘から)。じきここは嵐にw 

 

種池山荘前で、爺ヶ岳とは反対方向の新越山荘から来られた方達とお話をして、針ノ木岳方面の登山道の様子をうかがいました。

針ノ木岳付近はまだ雪が多い&危険だそうで、新越山荘から引き返してきたようです。

 

お話のあと、そろそろやってくる若い子たちに山荘前のベンチは占領されるだろうと思い、爺ヶ岳へ!

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嵐の前の静けさw 山荘すぐ先には雪渓が200~300m程ありましたが、問題ないでしょう。

 

元気な「こんにちは!」「こんちは!」「ども!」の集中攻撃をかいくぐり、

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道を譲ったり譲られたり。礼儀正しい生徒さんたちでした! 先生方もお疲れ様です。

 

爺ヶ岳南峰に! 

「うん、見えないのは分かってた…!」

山荘からは50分程です。ナナカマドなどの低木からハイマツに切り替わり、登山道は大きな石がごろごろしていますが、危険個所は特にありません。

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剱岳立山連峰方面

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晴れてると、右のように鹿島槍ヶ岳がカッコよく!

 

山頂では、途中でお会いした岐阜の方と一緒になりました。

こちらは初めてだそうで、石の事も含めて(余分だったかなw)、雲に隠れた山々のガイドをしましたが、どんよりした天気に残念そうでした。

それでも「北アルプス雄大で最高だね!」と。

(ですよね!)

数年前から登山を始められたそうで、昨年は槍ヶ岳に登り、いつか剱岳に登れたらと仰ってました。

(ぜひ剱岳頂上からの最高の景色を堪能してほしいです!)

この先の冷池山荘に宿泊の予定をされていたので、「明日見えると良いですね!」とおわかれしました。

翌朝、鹿島槍や剱は見えたかな~?

 

※種池山荘公式の最新情報によると、翌3日朝は晴れ!鹿島槍立山がきれいに見えたようです!

 

 

晴れの爺ヶ岳南峰からの眺望をご覧になりたい方は、この記事をご覧ください。

cashel.hatenablog.com

 

爺ヶ岳をつくる石たち:火山の下で何が起こっていたのか【地質】

まずは氷河について

爺ヶ岳の北にある鹿島槍ヶ岳には、長野県唯一の氷河があります。

ヨーロッパアルプスのものに比べれば、規模が小さいです。しかし、緯度の低い地域に存在することは意義深く、いかに後立山連峰の標高が高く、そして降雪量が多いのかを物語っています。

ちなみに、富山県側には5つもの氷河が剱岳立山連峰にあります。麓の博物館の学芸員の方の執念が実って認定されたそうです!

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3年前の山の日。鹿島槍の雪渓が氷河として認定されたことを記念して「さんぱく*6」で講演が行われました。
 

爺ヶ岳扇沢の石たちが物語ること 

登山口脇の扇沢や種池山荘周辺に転がっている白い石たち。

この石をよ~く見ると、日本の火山の地下深く、マグマ溜まりで何が起こっていたのかを知ることができます!

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登山口付近の扇沢両岸から。白い石が目立ちます。それにしても雪解けの水量が半端ない!

 

白い石花崗岩です。

花崗岩はドロドロのマグマが地下深くゆっくり固まった石です。

この白い花崗岩には、灰色の丸っこいものがたくさん入っていることに気付きます。

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扇沢の巨礫。まるでホルスタインのようですw

 

この灰色の部分も別のマグマが固まってできたものです(閃緑岩)。

灰色の部分は濃いものもあれば薄いものもあったり、粗いものもあれば細かいものもあったり、色んなものがあります。

さらに、白と灰色の二つの境目を拡大して見ると、

灰色の中には白い花崗岩由来の結晶が入っていたり、境界部が波打っていたり破裂しているように見えたり、様々です。

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巨礫の拡大写真。灰色の部分に白い結晶が入っているのがお分かりになると思います。

 

このような産状は、

花崗岩をつくった白いマグマ(赤熱してたと思いますが…)の中に、灰色の石をつくった黒いマグマが入ってきて、二つのマグマが混ざったり混ざらなかったりしたことを示しています。

 

1970年代以降の火山研究では、日本列島の火山の多くが、この白いマグマと黒いマグマが地下深くで混ざり合った結果、噴火したと考えられています。

 

ちょっと込み入った話ですが、噴火の過程を一部省略して簡単に説明してみますと、

  1. *7を大量に含んだ高温の黒いマグマ*8が、低温の白いマグマ溜まりに入る。
  2. 黒いマグマが冷やされて固結し、黒いマグマの中に水の泡*9ができる。
  3. 黒いマグマ中の水泡は密度が小さいので浮き袋となる。その結果軽くなった黒いマグマが、白いマグマと混ざり合いながら上昇・噴火する

 

かなり大雑把にまとめましたが、それでも分かりにくいですよね(汗)

ですので、さらに簡単にまとめると(様々な要因がありますが)、

日本列島の火山噴火の多くは、マグマ混合マグマに含まれる水の発泡によって引き起こされる。(あんまり変わらないかな……)

 

ちなみに、軽石に見られる無数の小さな穴は、マグマから水が発泡した跡です。

 

話を爺ヶ岳に戻すと、

このマグマ混合によって噴火したと考えられる石が、柏原新道や爺ヶ岳に見られます。

その多くは、噴火時に生じた火砕流が堆積したものです。

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山頂の石をよく見ると、1㎝未満の黒く細い模様がある方向性を持ってたくさん入っていることが分かります。

 

火砕流堆積物とは:

数100℃の火砕流は堆積した後も非常に高い温度を保つことがあります。

火砕流堆積物は、その自身の高熱によって再び融けて柔らかくなり、自重で押しつぶされ変形してしまいます。黒い模様もその時に押しつぶされた軽石です。

このように押しつぶされた産状を示す石を「溶結凝灰岩」と言います。

出典:昔の私の記憶

 

現在噴火している火山の下を直接見ることは出来ません。 

ですが、昔の火山の地下深くにあったマグマ溜まりが固まって隆起したもの、すなわち花崗岩などを見ることによって、火山の下で何が起こっていたのか間接的に知ることができます。

扇沢花崗岩中に見られる灰色の部分は、実際噴火せずマグマ溜まりに留まったものですが、それでも火山の下で何が起こっていたのか、その手掛かりをこの石から垣間見ることができるのです!

 

火山活動が終焉してから現在まで

以上見てきたように、現在爺ヶ岳に火山体は残っていませんが、100万年位以上前の爺ヶ岳周辺には活発な火山がありました。大量の噴出物をまき散らし、周囲の山にその痕跡を見ることができます。

しかし、活発に続いた火山活動もやがて終わりを迎えます。地下からのマグマの供給が途絶えた火山は風化・浸食にさらされ、山体そのものが消えていきました。

その後、数10万年から100万年の長い間、プレート運動によって隆起が始まり、現在も氷河が残るような高い山脈「北アルプス」ができました。

 

時代は下り……

その北アルプスの麓に、数万年~数千年前から人々が住むようになり、

やがて農耕を覚えた人々は山の雪形を見て田植えを始め、

近代になると、徐々に登山が注目されるようになり多くの人々が山を目指す。

 

戦後、日本各地の山で登山道が整備され、北アルプスも大衆化が進む。

そして、柏原新道の高山植物を楽しみながら登って、今自分は爺ヶ岳にいるんだな~・・・

しみじみw

 

と適当に思ってたら、1時間半以上山頂にいましたw 

天気の良い日にまた来よ~♪

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鹿島槍に続く稜線上に次々に生まれる雲(小屋は冷池山荘)。こんな景色もたまりません。燕なのかな?山頂には何羽かビュンビュン勢いよく飛び回ってました(背景は針ノ木雪渓とスバリ岳)

 

北アルプスの山の成立ち・動植物・登山史について興味を持たれた方は、是非「さんぱく」に立ち寄られてはいかがでしょうか~?

omachi-sanpaku.com

 

爺ヶ岳周辺は中部山岳国立公園の特別保護地区・特別地域です。当該地域では、動植物だけでなく岩石の採取も固く禁じられています。とるなら、「写真」ですね!

 

おわりに

種池山荘の公式ウェブサイトで柏原新道を確認していると、下記の注意書きがありました。

昨今はいろいろな方がホームページ等で登山記録を発表されていますが、短時間で歩いた ことがご自慢の記録やかなり強引に日帰りした記録などを載せられている例も多々見受けられますので、気をつけていただきたいと思います。 またそういった自慢の記述に感化された方が、最近目立つのも何かと心配でなりません。

出典:冷池山荘 種池山荘 新越山荘公式ウェブサイト「柏原新道を登ろう!

 

私も昔よく山に登っていた頃は、人より速く歩いてやろうと思っていましたので声を大にして言えませんが(汗)、登山系SNSを見るとコースタイムの半分ほどで登る人が多い事……また最近はトレランが流行っているそうですね…… もちろん、先日南アルプスで会ったお兄さんみたいに体力が十分あれば問題ないと思います。

 

ですが、自分のレベルに合った山を無理のないペースで登ることが大切です!

 

高山植物を見たり、途中の景色を見ながら休憩したり、すれ違った登山者と話したり、または山の石を見てみたり……(あんまり無いかな、笑)。

ゆったりしたペースで登ると、多くの発見があり、様々な楽しみを体験できます。

また、山では下界以上に何が起こるか分かりません。不測の事態に備えて体力を温存しておくことも大切です。

 

私も、マナーを守って無理のないマイペース登山、これからも楽しみたいと思います!

 

参考文献

原山 智・高橋 浩・中野 俊・苅谷愛彦・駒澤正夫(2000)立山地域の地質.
地域地質研究報告(5万分の1地質図幅),地質調査所, 218p.(リンク産総研地質調査総合センター)

*1:無雪期・天気良好時。長野県山岳総合センター作成

*2:数字が体力度。10が最高。アルファベットが難易度。Eが最高。爺ヶ岳中峰まで合計コースタイム:8.3h、ルート長:12.3km、累積標高差:1.57㎞

*3:爺ヶ岳南峰下にある山小屋(テン場あり)

*4:冷池山荘:つめたいけさんそう。鹿島槍爺ヶ岳間の山小屋(テン場あり)。ちなみに鹿島槍の北側には、白馬館のキレット小屋があります(テン場なし)

*5:種池ー針ノ木岳間にある山小屋(テン場なし)。針ノ木岳の先、針ノ木峠には針ノ木小屋がありテン場もあります

*6:大町山岳博物館

*7:もともとは、沈み込み帯の海洋プレートに含まれていた水

*8:バスタブ一杯のマグマに、人間一人分の水

*9:飽和度に達した水が二次沸騰したため

「さんぱく」でライチョウ!【大町山岳博物館】

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行こう行こうと思っていた、ライチョウ展示。

今年3月15日から全国*1で始まりましたが、

爺ヶ岳下山後に、やっとこさ行ってきました!

近いと足が遠のく不思議!

 

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ライチョウは博物館の付属園にいます。

 

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ライチョウの飼育舎の前では、何やらTVの収録が……

 

入っていいのかな~?と近づくと、係員の人が手招き、

ライチョウ、出てるよ!」

「おお!」

と、飼育舎に入ると、

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いました!ライチョウ

 

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いつもより人が多いのか、ソワソワしてました……

 

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蓮華岳の写真をバックに。

確かこのライチョウは卵からふ化させているので、故郷を知らないのでしょうね……

 

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先週の仙丈ヶ岳以来、1週間ぶりのライチョウでした!

 

TV収録のインタビューでも聞こえましたが、最近は絶滅したはずの中央アルプスでもライチョウが確認されたそうですが、近年ライチョウは激減している*2そうです。ですので、こういった事業も必要なのかもしれません。

 

しかし、思いましたが、果たしてガラス越しのライチョウは幸せなのですかね…?

 

生態系の事は詳しく分かりませんが、人間の経済活動も生態系の一部と考えれば、人間が作り出した生態系から淘汰される生物が出てくるのも、ある意味、止むを得ないのかもしれません…… 

 

人間の都合で巣から卵を取ってきて、ふ化・飼育されたライチョウは、果たして楽しい人生(鳥生?)を送っているのかな?なんて考えてしまいます。

 

もちろん、目の前の可愛いライチョウには元気でいて欲しいと思います。

山で出会うライチョウ、他の小動物や高山植物の花々は、景色と共に登山の楽しみです。

 

今更この生活を止めることは出来ませんが、われわれが便利に豊かに生きるために作り上げた生態系。

人間が死に絶えた後、新たに出現する知的生命体もしくは太陽系外からやってきた知的生命体は、われわれが地球に対して起こした行動をどのように見るのでしょうかね?

 

賛同を得られない考えだと思いますが、地学を勉強すると、いろいろ考えてしまいます……

あれ?重くなってしまいました……

 

ライチョウかわいいです!

また山で会いたいな!

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ライチョウライチョウに魅せられる人々@燕岳。2019年6月撮影。

 

大町山岳博物館

www.omachi-sanpaku.com

*1:上野動物園をはじめ、栃木・長野・富山・石川の動物園等で公開されています

*2:1980年代に3,000羽いたライチョウは、2000年代には1,700羽まで減少

白皙の貴公子『甲斐駒ヶ岳』:白砂の登山道の先に待つ天上の世界には、伊豆半島衝突の…!Jun 26, 2019

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東京と名古屋を結ぶ「中央自動車道」を走ると、必ず寄るパーキングエリアがあります。

長坂ICと小淵沢ICの間に位置する「八ヶ岳PA(下り)

 

ここからは、八ヶ岳の「権現岳」、奥秩父の「金峰山

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そして、南アルプス北部の山々などを眺めることができます。

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鳳凰三山北岳

 

その中でもひと際存在感を放つ「甲斐駒ヶ岳

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以上これまでの写真は、今年の正月に八ヶ岳PA(下り)で撮影したものです。

 

山から遠ざかっていた時も、この辺りを通るたびに甲斐駒ヶ岳を見上げていたものでした。急峻で男性的な山容に無意識のうちに視線が吸い寄せられていました。

 

甲斐駒ヶ岳と言えば、白州の黒戸尾根から山頂に至るルートがよく知られています。しかし、黒戸尾根は早月尾根*1と並び長大な急登であり、久しぶりに山登りを再開した私には体力的に無理です!

ですので、今回の山行では反対側の北沢峠から山頂を目指しました。

 

Contents

 

甲斐駒ヶ岳頂上からの眺望

まずは、山頂からの眺めです!

当日は天気予報通りの晴れ。程よく出ていた雲がアクセントとなり、素晴らしいパノラマが360度広がりました!

 

パノラマ

広角で360度!北アルプスから時計回り!

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北アルプス全景

 

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八ヶ岳を中心にいろいろ!(北信五岳、霧ヶ峰、上信国境、秩父などなど)

 

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秩父山系

 

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富士山と雲の下の甲府盆地

 

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ワンツースリー!(富士山、北岳間ノ岳南アルプスの山たち)

 

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南アルプス主稜線と仙丈ヶ岳

 

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恵那山、中央アルプス御嶽山、白山に乗鞍がチラリ

 

以上、パノラマ終わり!

 

ズームアップ 

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後立山連峰爺ヶ岳~白馬三山、小蓮華山:トリミング)

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立山剱岳。手前は燕岳、有明山、餓鬼岳、針ノ木岳蓮華岳。(トリミング)

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笠ヶ岳穂高連峰槍ヶ岳(トリミング)

 

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南八ヶ岳

 

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北八ヶ岳と上信国

 

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秩父山系

 

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大菩薩嶺方面

 

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富士山と鳳凰三山

 

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中央アルプス北部(宝剣岳木曽駒ケ岳など)

 

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御嶽山と白山

 

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乗鞍岳

 

ため息しか出ない山頂の一時でした。

13時10分のバスに乗るため、頂上には30分程の滞在でしたが、もっといたかった~!

 

甲斐駒ヶ岳について

甲斐駒ヶ岳(標高2,967m)は、長野県伊那市山梨県北杜市の境に位置します。長野県側では甲斐駒ヶ岳の事を「東駒ケ岳」と呼びます。 

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仙丈ヶ岳から甲斐駒ヶ岳

 

なだらかな山体を造る南アルプスの他の山と異なり、甲斐駒ヶ岳は峻険な山容を呈します。

また、山体を造る白色の花崗岩は、周囲の暗色の石からなる山から際立ち、その険しさと白さによって、南アルプスの貴公子とも呼ばれ、深田久弥日本百名山に選ばれています。

 

 

甲斐駒ヶ岳に至るルートはいくつかありますが、「黒戸尾根ルート」と「北沢峠ルート」がメジャーとなります。

白州の尾白川から上がる「黒戸尾根ルート」は、標高差2,200mもあり、日本屈指の長尺の登山道となります。一方、「北沢峠ルート」は標高2,030mの北沢峠*2が開始地点となり、比較的容易に頂上に達することができ、人気の登山コースとなっているようです。

今回の甲斐駒ヶ岳登山は、後者の「北沢峠ルート」を選びました。

 

登山道状況(北沢峠ルート、頂上直下は巻き道コース)

「北沢峠ルート」のグレーディング*3は、仙丈ヶ岳と同じく3C*4となります。

しかし、

  • 岩稜帯が多い(鎖場は無い)
  • 頂上直下の滑りやすい道(巻き道)

を考えると、仙丈ヶ岳よりも難易度は少し高いと思います。特に、直登ルートを選択すると岩登りの覚悟が必要です。

 

北沢峠から駒津峰まで 

登山開始は、昨日の仙丈ヶ岳登山口の反対側、北沢峠のこもれび山荘脇の登山道からです。 

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甲斐駒ヶ岳までに双児山(標高2,649m)と駒津峰(標高2,752m)の二つのピークがあります。

双児山までは樹林帯を歩きます。

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トトロが体当たりでもしたの?w 大木がバキバキに折れてます。高度が上がるにつれて、イワカガミなどの高山植物も。

 

双児山(標高2,649m)からハイマツ帯となり、視界が開けます。

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甲斐駒ヶ岳。あ、カサ出てますね~。

 

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横を見ると、鳳凰三山甲府盆地は雲の下。振り返ると、南アルプスの主稜線!

双児山から一旦下り、ハイマツ帯の斜面を登り返すと駒津峰(標高2,752m)です。

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鋸岳の向こうに北アルプス!テンション上がります!

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うぁ、岩だらけ…。どこ登るんだろう(ちょっとテンション下がるw)。でもソフトクリームみたい、美味しそう~ww

 

駒津峰から甲斐駒ヶ岳まで 

駒津峰から甲斐駒ヶ岳の取り付きまでは、ちょっとした岩場になるので気を付けましょう。

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左に六方石。逆光 (-_-)

 

六方石を過ぎ、最低鞍部から少し登ると、直登ルートと巻き道の分岐に。直登はある程度の登攀スキルが必要のようです。巻き道も真砂化*5した花崗岩で滑りやすく歩きにくいです。

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もちろん巻き道を選びました(笑)。安全第一!って、山登ってる時点で……

深く積もった砂に足を取られないように、慎重に登りましょう。

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急斜面、滑りやすい&眩しい!

 

上部は踏み跡が交錯する部分もあるので、目印をしっかり見て迷わないように。

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あとすこし!

 

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振り返ると、おおぉー!!白砂のビーチの先にはワンツースリーw

 

分岐から1時間ほどで頂上です! 

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お腹すいたーw

 

帰りはさらに滑りやすいので、慎重に下りましょう!

山頂や途中で「下りは大変だね」と話している方が多かったです。

 

甲斐駒ヶ岳を造る花崗岩、甲斐駒花崗岩伊豆半島の衝突の関係

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赤・赤紫色は花崗岩類を示す。出典:産総研地質調査総合センター、シームレス地質図V2に一部加筆(リンク)。

 

南アルプスの大部分を造る「四万十帯」

南アルプスの大部分は、2億年前から2,000万年前の海底に堆積した地層や少数の火山岩からなります。

これらの石は、海洋プレートが大陸プレートの下に沈み込む際に、海洋プレート表層部がはぎ取られて、大陸プレートに付け加えられた地層です。このような地層は「付加体」と呼ばれ、この地域だけでなく日本列島に広く見られます。

この地域に見られる付加体は「四万十帯」と呼ばれ、南アルプスの大部分を占めます。前日に登った仙丈ヶ岳もこの四万十帯の石から成ります。

以上の内容は、引用・参考文献の1によります。

 

伊豆衝突帯の花崗岩、「甲斐駒花崗岩

一方、甲斐駒ヶ岳を造る石は花崗岩です。花崗岩とはマグマが地下深くでゆっくり冷え固まった石で、いわばマグマの化石です。

甲斐駒ヶ岳花崗岩を「甲斐駒花崗岩」と言います(以下、甲斐駒岩体)が、最近の研究(引用・参考文献2,3から、1,500万年前に四万十帯に貫入固結したと考えられています。この時代は、日本列島の原形が完成し、その本州弧に伊豆半島が衝突していた頃でした。

マグマが発生する場は色々とありますが、甲斐駒岩体を造ったマグマは、その衝突する伊豆半島(伊豆小笠原弧)を乗せたフィリピン海プレートの地下深くが融けたものです。

地下深くで発生したマグマは、上方にある四万十帯の中を、周りの石を融かし*6ながら上昇し定置・固結したものと考えられています。

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四万十帯の石を捕獲する甲斐駒花崗岩

 

「え?甲斐駒ヶ岳伊豆半島は遠く離れているけど?」とお思いになる方もいらっしゃるでしょう。

伊豆半島フィリピン海プレート上にあり、そのフィリピン海プレートは大陸プレート(ユーラシアプレートと北米プレート)に沈み込んでいます。現在、甲斐駒ヶ岳の地域では地下数10㎞~100㎞の深さにフィリピン海プレートがあると考えられています(引用・参考文献4)。

伊豆半島の衝突(フィリピン海プレートの沈み込み)に伴って発生したマグマは他にもあり、この周辺では甲府岩体、丹沢岩体があります。さらに同じ時代に活動していたマグマとして、熊野、足摺岬屋久島などにも同様の花崗岩類が見られます。

ちなみに、東海・東南海・南海地震さらに日向灘沖の海溝型の大地震を引き起こす主な原因としても、このフィリピン海プレートの沈み込みが考えられています。

 

まとめ

以上簡単にまとめると、甲斐駒ヶ岳花崗岩は、1,500万年前に衝突していた伊豆半島フィリピン海プレート)の地下深くが溶融し、四万十帯(まだ南アルプスは存在しない)を上昇・同化しながら定置した花崗岩である。その後、100万年前に始まった南アルプス地域の隆起によって、現在の姿を形成したと考えられるかもしれません。

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おわりに 

双児山から北沢峠を下っていると、物凄いスピードで登ってくる姿が!もしや?と思いよく見ると、前日に仙丈ヶ岳の下りでお会いしたお兄さん!

昨日は黒戸尾根から両俣小屋のテン場。今日は両俣から黒戸だそうです。バイタリティーの凄まじさに感服する限りでした。私にはいくら頑張ってもマネできないことだと思います。

ですが、登山は個人の力量に応じて楽しむもの。楽しみ方も、景色を楽しんだり、花や小動物を見て楽しんだり、はたまた石を見て楽しんだり(かなりマイノリティだと思いますが…)、さまざまです。

最近は、鳥にも興味を覚えて野鳥図鑑を買ってしまいました(笑)。今まで知らないことを覚えると、それまで見えていなかったものが見えてきますね。

ほんと、山は奥深いですね!

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同日に訪れた白馬。この日はずっといい天気でした!

 

引用・参考文献

  1. 南アルプスの地形・地質遺産(リンク静岡市公式)
  2. 齊藤 哲(2014)伊豆衝突帯に分布する新第三紀花崗岩質岩体の地球化学的多様性とその意義:未成熟海洋性島弧から成熟大陸地殻へ. 岩石鉱物科学, 43, 4, 115-130p. (リンクJ-STAGE
  3. 齊藤 哲(2015) 海洋性島弧から大陸地殻へ:伊豆衝突帯花崗岩質岩体の成因研究. 岩石鉱物科学, 44, 1, 32-44p. (リンクJ-STAGE
  4. フィリピン海プレートの沈み込み部分の形状まとめ(リンク気象庁気象研究所地震火山研究部/弘瀬冬樹氏のウェブサイト)

*1:馬場島(ばんばじま)から剱岳に至るルート。標高差2,200m。上部は鎖場の連続。通常ルートとしては最上級

*2:公共交通機関で上がれます

*3:長野県 H30. 4公表

*4:コースタイム:7.2h、ルート長:6.8km、累積標高差:1.11㎞

*5:花崗岩の物理的風化作用の一つ。鉱物の熱膨張率の違いにより、結晶単位でバラバラになり砂礫状の真砂になること。後に化学的風化に進みやすい

*6:同化作用と言います

南アルプスの女王『仙丈ヶ岳』:3つのカールが造る雄大な山容の由来を調べてみる Jun 25, 2019

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今回も梅雨の合間を縫ってテント泊をしてきました。

今月は常念山脈を登り体力的に余裕があると判断したので、さらに高山に慣れるために比較的楽に登れる3,000m峰を選びました。

山を選ぶにあたって御嶽山*1乗鞍岳*2は除外し、

  • 登山口までのアクセスが良い
  • 登山道が良く整備されており、危険個所が少ない
  • キャンプ場がきれい、または水場がある

を基準に探してみると、「立山雄山(標高3,015m)」と「仙丈ヶ岳(標高3,033m)」の2山が候補に。

立山」は室堂まで交通機関を使って上がれば、数百m登るだけで頂上に立てます。が、立山黒部アルペンルートは往復(扇沢ー室堂)で9,000円超……しかも、小学生の夏以来、何回も登っています。

一方、「仙丈ヶ岳」のある南アルプスは、高校生の夏に北岳に行って以来訪れていません。さらに、甲府駅での慣れない野宿の疲れの為に高山病になってしまい、肩の小屋止まり……

 

ということで、ほとんど訪れたことのない南アルプスの「仙丈ヶ岳」、プラス「甲斐駒ヶ岳」にテン泊登山に行ってきました!

 

※地図を掲載するの忘れてました……仙丈ヶ岳登山案内の項目にグーグルマップを載せました(6/30)。

 

Contents

 

仙丈ヶ岳と登山道からの眺め

平日のバスが8時始発&登り開始が10時半と遅かったので、朝の快晴から雲が出てしまい、中央アルプスや遠くの山は見られませんでした。しかし、鳳凰三山以外の南アルプスは良く見えて満足の眺めでした!

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鋸岳(バリエーションルート)と甲斐駒ヶ岳

 

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甲斐駒ヶ岳は、周囲の山の石*3と違って花崗岩からなります。白い!

 

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アサヨ峰。鳳凰三山は雲の中……

 

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白根三山(北岳間ノ岳農鳥岳)と南アルプス南部。

 

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北岳。最近の雪でしょうか、うっすら雪化粧。肩の小屋も見えます。

 

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間ノ岳。右奥に農鳥岳

 

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南アルプス南部の塩見岳~光岳。アクセス悪し&ルート長し……いつか行けたらいいな~

やはり、きれいな眺めを望むなら朝早くに登りたいですね。翌日は甲斐駒ヶ岳の予定です。天気予報は晴れ、そして早朝に発つ予定ですので期待大です!はれろ~!

以前の記事にも載せましたが、下山途中にライチョウを見かけました。

テン場が圏外でしたので、途中の小仙丈ヶ岳で、ブログの記事に頂いたコメントに返信して下山し始めると、甲斐駒ヶ岳をバックにライチョウが!

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眼の上が赤いので、オスかな?

 

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「うざい人間がいるなぁ。なにみとるんじゃぁわれ~」ガン飛ばされました(笑)

 

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ずーっと監視されてました。

 

ライチョウには個体識別の為の足環がありました。人慣れしているようで、20分程でしょうか、私が立ち去るまでずっと同じ場所に佇んでいました。こちらに気付いても逃げる様子はありませんでした。巣で卵を温めるメスの為に監視していたのかもしれませんね。

 

仙丈ヶ岳(標高3,033m)登山案内

長野県伊那市山梨県南アルプス市の境に位置し、赤石山脈の3,000m峰として最北になります。山腹に3つの圏谷*4を抱く穏やかな山容は「南アルプスの女王」と称され、深田久弥日本百名山にも名を連ねています。

仙丈ヶ岳のグレーディング(長野県公表。H30. 4)は、北沢峠~仙丈ヶ岳~北沢峠で 3C*5(7.6h*6, 9.5km*7, 1.12km*8)となり、ある程度経験を積んだ登山初心者の方には最適な山になるのではないでしょうか。3,000m峰の登竜門的な山ですね。

もちろん、登山は慎重に。これまで登った山と比較し、そしてご自身の体力・技量を鑑みてトライできるようであれば、登ってみると良いかもしれません。

甲斐駒ヶ岳登山口とありますが、仙丈ヶ岳の登山口でもあります。

 

登山口(北沢峠)までのアクセス

仙丈ヶ岳への登山ルートはいくつかありますが、今回は一番人気の「北沢峠(小仙丈ヶ岳経由)コース」にしました。

伊那市仙流荘の横にある「南アルプス林道バスのりば」からマイクロバスに乗り1時間弱で北沢峠です。

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道の向こうには鋸岳。始発時刻は時期により異なります。

 

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北沢峠のこもれび荘。テント場はありません。山梨県側に少し下った長衛小屋にテン場があります。
 

行き帰りとも同じ気さくな運転手さんで、車窓から見える景色の説明をなさっていました。帰りは運よく助手席に座らせて頂き、運転手さんとたくさんお話をさせて頂きましたが、ご自身も良く登っておられるようで、南アルプスの様々な登山ルートを教えて頂きました。

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右の写真:鋸岳の鹿窓。見えるかな…?

 

また驚いたことに、最盛期は10台×2で北沢峠までピストンするそうです。山梨側からも合わせたら恐ろしいことに……みんな泊まれるのかな?

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最盛期にはこの数倍のバスが……

 

登山道状況(北沢峠~小仙丈ヶ岳仙丈ヶ岳

北沢峠からは5合目までは樹林帯を歩きます。道は山頂までよく整備されており、危険な個所は特にありません。登山者として標準的な体力があれば、歩いていれば山頂にたどり着くレベルです。

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北沢峠の仙丈ヶ岳登山口。

 

ただし、五合目*9(大滝の頭)の分岐では、馬の背方面は事故の為に通行禁止でした。

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この五合目を過ぎると、周りの植生は次第にハイマツ帯へと遷移し、展望が広がります。なお、この区間では登山道に雪が2ヶ所ほどありましたが、規模(長さ10m程)も小さくトレースがはっきりしていたので、気を付ければ危険のないものでした。

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左には北岳、後ろには甲斐駒!よーく見ると、長衛小屋のテン場も見えます。

 

6合目まで来ると、完全に高山の世界に。

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右奥のピークは小仙丈ヶ岳(2,864m)。

 

眺めの良い小仙丈ヶ岳でお昼を食べました。

この先はちょっとした岩稜帯(鎖場なし)もありますが、丹沢の表尾根など簡単な岩登りに慣れている方であれば全然問題ないでしょう。

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仙丈ヶ岳から、仙丈ヶ岳と小仙丈沢カール。

 

小仙丈沢カールを左手に見ながら稜線沿いに登ると、右手に藪沢カールと仙丈ヶ岳山頂が見えてきます。

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雪渓のクレバスが気になります…… 

 

藪沢カールとその底にある仙丈小屋を下に見ながら緩やかな稜線を回り込むと、やがて頂上に!

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伊那谷方面。中央アルプスは雲の中……

 

帰りは同じルートを通って、長衛小屋まで下山しました。 たのしかった~!

 

宿泊施設

北沢峠周辺には3つの山小屋があります。北沢峠のこもれび荘、伊那市側にある太平山荘、そして南アルプス市にある長衛小屋。

それぞれの山小屋の間隔は歩いて10分程。こんな至近距離に多いなぁと不思議に思いましたが、伊那市長の寄稿文・講話集を読むと何やら複雑な背景がありそうです……

今回は、北沢峠から山梨県側に10分程下った、唯一テン場のある長衛小屋でテント泊をしました。料金は一人一泊500円です。やすい!川砂利の地面でペグは刺さりにくいですが、大きな石がたくさんあります。水は無料。トイレは水洗でした。

欠点は空が狭いことくらいですかね。隣には沢が流れ、きれいなテン場で居心地が良かったです。また来たいと思わせるテン場でした。

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長衛小屋テント場の規模は100張。右の写真の下にも敷地は広がります(奥の山は小仙丈ヶ岳)。

 

南アルプスの女王「仙丈ヶ岳」の生い立ち

仙丈ヶ岳の山頂付近には「カール(圏谷)」があります。

カールとは、穂高連峰の涸沢カールや立山の山崎カール*10等でよく知られていますが、山岳氷河の浸食による椀状の地形の事を言います。

約7万年前~1万年前の最終氷期に日本列島の山岳地帯では山岳氷河が発達していました。氷河が造る地形はいくつかありますが、仙丈ヶ岳には氷食によってカールが出来ました。南アルプスには仙丈ヶ岳の他に、間ノ岳荒川岳悪沢岳にもカールがあり、荒川岳のカールは日本最南端のものになります。

仙丈ヶ岳は山頂の周りにカールが3つ(大仙丈沢カール、小仙丈沢カールと藪沢カール)もあります。

これら3つのカールが仙丈ヶ岳を削ったことにより、穏やかな山容が造られました。その結果、仙丈ヶ岳南アルプスの他の山々と比べ柔和で女性的な印象をもち、「南アルプスの女王」と呼ばれているのでしょう。

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小仙丈沢カール(左)と藪沢カール(右)

 

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藪沢カール底部、仙丈小屋の右下にある高まり(モレーン)は、氷河に削られ末端まで運ばれ堆積した砕屑物。

 

一方、仙丈ヶ岳を構成する石はおよそ数千万年前の砂岩主体で、他に粘板岩やチャートからなります。主に海に堆積した地層仙丈ヶ岳を造ります。

では、海の地層からなる仙丈ヶ岳がなぜ標高3,000mを越え、山岳氷河を形成するほどの高峰になったのでしょうか?

それは、南アルプス年間約4㎜以上の速さで隆起しているからです。

日本列島は4つのプレートがひしめき合う、世界でもまれに見る変動帯です。このプレートの運動により、南アルプスは世界でもトップクラスの隆起量を誇ります。また、周囲の地質調査から、南アルプスは約100万年前から隆起が始まったと考えられています。

余談ですが、日本三大崩れの一つ「大谷崩」が代表するように、この隆起量の為に浸食量も大きく、南アルプスは不安定な土地です。そのため、深層崩壊などの地滑りの危険性が高い地域とされています。

以上のように、約100万年前から続いた急速な隆起と数万年前の最終氷期氷河による浸食によって、南アルプスの女王が誕生したのかもしれません。

 

おわりに

1日目は出発時刻が遅く、仙丈ヶ岳には午後2時頃に着きました。山頂の景色を楽しみ小仙丈ヶ岳に下る途中、物凄い勢いで登ってくるテン泊装備のお兄さんに会いました。

この時刻にこれからどちらに向かうのだろうと、あいさつの後に伺ってみると、両俣小屋のテン場に向かうとのこと。両俣はここから5時間以上先……。

さらに伺うと、朝は黒戸尾根から甲斐駒を登ってきたそうです。黒戸尾根は剱岳の早月尾根と並ぶ日本屈指の長丁場の急登。ちょっとやりすぎたと後悔の弁でしたが、楽しそうでした。体力あればこその山行ですね。

私には、ただただ感心・驚きでした(帰りのマイクロバスの運転手さんも絶句してました)が、 そんな体力も気力もない私はこれからもお気楽登山を楽しみたいと思います(笑)。

 

引用・参考文献

*1:まだ危険である事と、被災者の事を考えると…

*2:駐車場からすぐ!簡単すぎます

*3:付加体堆積物からなる四万十帯

*4:けんこく:カールとも。氷河の浸食作用による椀上の地形。代表例:涸沢カール

*5:体力度1~10、技術難易度A~E:数字が大きいほど体力が必要、Eが最高難易度。無雪期・天候良好時

*6:合計コースタイム

*7:ルート長

*8:累積標高差

*9:標高差1,000mなので、1合は100m

*10:日本で初めて認定されたカール

【今日の一コマ】イワヒバリと八ヶ岳連峰

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南アルプスの貴公子「甲斐駒ヶ岳」から

先週登った四阿山根子岳蓼科山からチラリ

「今日の一コマ」、鳥シリーズになってしまいました~