百名山の四阿山ではない方の『四阿屋山』@信州【筑北三山ハシゴ登山①】May 3, 2019
四阿屋山。北方の冠着山から撮影
信州には北アルプスを始めとする日本アルプスや八ヶ岳、浅間山など多くの人に知られる山々が集まります。これらの名立たる山々は信州の国境に位置し、中央部は一見空白地帯のように見えます。
しかし、その中央部を埋めるように位置する筑摩山地には、百名山の美ヶ原高原を筆頭に鉢伏山、高ボッチ山、さらに先週紹介した京ヶ倉・大城のようにたくさんの個性的な山が存在します。
憲法記念日の5月3日に、この筑摩山地に位置する「筑北三山」をハシゴしてきましたので、いくつかに分けて紹介していきたいと思います。
筑北三山とは、長野県東筑摩郡の筑北村や麻績村(おみむら)にある個性的な三つの山であり、「四阿屋山」、「聖山」、「冠着山」から成ります。
それぞれが地域を代表する里山として知られており、登山道も地域の人々の手によってよく整備されています。さらに、一つ一つのコースがコンパクトですので、1日で周ることができます。
今回の【筑北三山ハシゴ登山】では、四阿屋山、聖山、冠着山の順番で登ってきました。まずは四阿屋山について紹介していこうと思います。
四阿屋山(信州) 標高1,387m
山を登る人に「あずまやさん」と問えば、多くの方が百名山の「四阿山(長野県・群馬県)」を答えるかと思います。私も最近までそうでしたが、先週登った「京ヶ倉・大城」から見える山々を改めて見直してみると、ごく近いところに同じ名前を冠し、一文字多い「四阿屋山」があることを知りました。
後方の左側が「四阿屋山」。京ヶ倉・大城より撮影
北アルプスを登っていた頃の私は里山に対して無頓着で、自分の住んでいる地域にどんな里山があるのかをほとんど知りませんでした(汗)。しかし、最近の個人的な登山ブームで里山に対する興味が高まり、自分の住む街が魅力的な里山に囲まれていることに気付きました。灯台下暗し……
そんな反省も踏まえて、北アルプスが登れるようになる来月までは(冬山はやりません)、筑摩山地の里山を中心に歩いていこうと考えています。
「四阿屋山」は、少し個人的な反省に話が逸れましたが、埼玉県秩父山地にも同じ名前の山があるようです。今回私が登った四阿屋山は長野市と松本市の間にある筑摩山地に位置し、筑北三山の一角をなします。
筑北村からよく目立つ四阿屋山は、筑北地域のシンボルとして、水源の山として、そして五穀豊穣を祈願する山として、地域の人々に愛されてきたようです。またこの地域には、正月に餅の代わりに蕎麦かうどんを食べる「餅なし正月」の風習があり、その起源は四阿屋山にあるそうです*1。
このように四阿屋山は、筑北地域の暮らしに深く根差した山と言えるでしょう。
さて、本題の四阿屋山登山です。
筑北村観光案内のサイトによると、登山ルートは、
- 坂北(中村)ルート
- 坂北(刈谷沢)ルート
- 本城(栃平沢)ルート
- 坂井(草湯ルート)
の4ルートがあります。今回は筑北村おすすめの「1. 坂北(中村)ルート(登り)」と「2. 坂北(刈谷沢)ルート(下り)」を選択しました。
ルート1は石造物群(ちょっと脇道に逸れ、ピストンします)や見晴台(北アルプス眺望◎)があり、他のルートと比べ変化に富んでいます。ルート2は、ルート1下部をショートカットしたものです。
ところで、「四阿屋山」はおすすめの山かと問われると、お隣のバリエーションに富んだ「京ヶ倉・大城」に比べ、些か貧相(失礼)で……
しかし!
- 登山道までの車道や駐車場の状態の良さ
- 安全な登山道
- 見晴台からの展望の良さ
- 登山客が少ない(早朝でしたので、状況によりますが……)
以上4点を考えると、静かな環境で北アルプスの眺望を楽しみたい方におすすめの山と言えるでしょう!また途中の石造物群もそれぞれの個性的なお顔が魅力的で、筑北村の風習を感じながら登ることができます。
時間帯にもよりますが、四阿屋山では単独行の男性とお会いしただけです。一方、後半に登った聖山(山頂まで車道あり)や冠着山(山頂まで徒歩30分)では、登山客や一般客が多い印象でした。
登山データ
今回から他サイトや山雑誌を参考に、登山データの項目を整理整頓してみました。見やすいように随時見直していきたいと思います。
『四阿屋山』 難易度:★★☆☆☆*2
【所在地】長野県東筑摩郡筑北村。長野道麻績ICより坂北(中村)ルート登山口まで車で30分
【標高】1,387m
【高度差】450m
【歩行距離】6km
【歩行時間】2h30m
【展望良さ】★★★★☆ 見晴台から北アルプスの展望◎ 頂上からの展望△
【難所有無】なし。鎖場など無く、良く整備された登山道。
【山域地質】中新世後期(1,000万年前以降、日本列島原形が完成し、フォッサマグナは海だった時代)。山頂は下位の裾花層の溶岩及び凝灰岩を貫く?形で冠着安山岩の溶岩が分布。山腹は堆積岩からなる小川層が基盤として広がる*3。登山道全域に於いて、露出悪く風化が進んでいる(グリーンタフ地域特有?)。
登山ルート概要(坂北ルート)と眺望
坂北(中村)登山口に設置された登山ルート案内
今回の登山ルートは、「坂北(中村)ルート(登り)」と「坂北(刈谷沢)ルート(下り)」です。上記看板左下から時計回りに
- 坂北(中村)登山口 (0630)
- 御嶽山 (0650)
- 権現池 (0720)
- 展望台 (0750)
- 四阿屋山頂 (0805) ここまで登り、以降下り
- 展望台
- 権現池 (0845)
- 刈谷沢登山口 (0850)
- 坂北(中村)登山口 (0910)
坂北(中村)登山口まで
車で、JR坂北駅南東の筑北小学校の北側の道を上がっていくと、やがて高台に畑が広がる東山地区に入ります。東山地区から南方の林道の入り口まで来ると獣除けのゲートがあります。
ゲート真ん中に設置された標識や筑北村観光ウェブサイトによると、自由に行き来できるようです。蛇腹式のゲートに鍵はありません。写真左から右へ自由に開けられるので、ゲート通過後は、標識の指示通り、しっかりと閉めてください。ゲートから先は、道路脇から伸びる雑草や木の枝を右に左に躱しながら(車に傷がつく~笑)、舗装された林道を数分走ると登山口に到着します。
坂北(中村)登山口から
坂北(中村)登山口前の車道は拡幅されており(写真外左側)、詰めれば10台ほど停められるスペースがあります。ここから登山開始です。
坂北(中村)登山口とその位置
登山道脇にたくさん設置された茸止めの標識を見ながら、樹林帯の山腹をトラバースしていると、石造物群の看板が見えてきます。石造物群までは主道から逸れて50m(10分)ほど登ります。
ちょっと急な坂道を登りきると、小さなピーク付近(1,123m)に四阿屋山御嶽石造神像・不動明王*4が木曽御嶽山に向かい鎮座(お立ちしていますが、汗)しています。
この地には御嶽信仰が篤く根付いているようです。信州の山ではこのような石像・石碑がしばしば見られます(例えば、美ヶ原高原)。
右側に2体ほどの空きが……
本道に戻り20分程やはりトラバース気味に歩くと、権現池に。ここから本格的な登りになり、樹林帯の尾根筋を上がります。
権現池から樹林帯を30分ほど登ると、山頂手前のピークに。
左手を見ると……おぉー!!!
ここは本ルートのハイライト、展望台です!山頂からの眺めよりも、こちらの方が眺望が素晴らしく開けたところなので、山頂よりもここで休憩時間を多めにとると良いかもしれません。主に北アルプスの眺めが素晴らしいです。
展望台からの眺め!ど~ん!(望遠持ってくれば……笑)
東天井岳付近から槍の穂先が!
先週登った京ヶ倉・大城の東壁。里山にしては、なかなか立派な岩壁です。今日も山頂は満員御礼かな~?
展望台からの北アルプスの絶景を十分堪能した後、5分程歩くと四阿屋山頂上に着きます。山頂は周囲を松やブナの林に覆われた四阿屋神社の奥本社があり、眺望は限定的でした。
それでも、北方の北信五岳や東方の長野盆地や冠着山の眺望はなかなかのものでした。
北信五岳のうち、左から戸隠山、(高妻山)、百名山の妙高山、黒姫山、飯縄山
ピラミッド型の冠着山(右)と長野盆地。左奥に北信五岳の斑尾山
当日はあと2山を登る予定でしたので、山頂の様子をぐるっと見た後すぐに下りました。下山ルートは、権現池までは同じ道を通り、権現池分岐点で刈谷沢登山口まで下りました。
10分も掛からず刈谷沢登山口に着きました。ここでは眺望を期待していなかったのですが、上の展望台では林に隠れがちだった常念岳とその横に奥穂高岳と前穂高岳が顔を出していました!
なお、この登山口も駐車スペースが広くとられていました。最短時間で登るならば、この登山口からをおすすめします。
思わぬ眺めを楽しんだ後、舗装された緩やかな坂道を10分程下ると登山開始地点の坂北(中村)登山口に到着です。
全体の所要時間は2時間半程度でした。登山道には倒木が少しありましたが、危険個所もなく整備されていたので快適に登れました。初心者の方も安心して登れる山でした。
下山後のお楽しみ~筑北村の観光施設~
筑北村には道の駅「さかきた」や直売所「まんだらの庄」*5、温泉宿泊施設やキャンプ場*6があります。
詳しくは、以下の筑北村の観光情報サイトをご覧ください。
山菜や新そばのおいしい時期に温泉宿に逗留し、登山を楽しむのもよろしいようです。じゅるり( ^﹃^*)
※たまに筑北村の事を坂北村と間違えそうになりますが(というか読み返していると、所々間違えていました、汗)、平成の大合併(H17年、2005年)に坂井村、本城村と坂北村が合併して筑北村となりました。
おわりに
筑北村は車で少し上がるだけでも素晴らしい眺望が楽しめます。しかし、よく整備された山道をゆっくり歩くと、その地に暮らす人々の信仰や生業に出会い、山間部の文化を深く知ることができます。
このように長野県には、日本各地の他の農村部と同様に、地域に根差した山がたくさんあります。京ヶ倉・大城しかり、四阿屋山しかり。眺望と共に地域の文化を知りながら行く登山。悪くないですね!
一等三角点からの360度の大パノラマ、
【筑北三山ハシゴ登山②】聖山編につづく~!(予定)