【四阿山】自分の登る山がどんな山か調べてみよう!【火山情報】
前回紹介した "We Banjo 3" のアルバム "Haven" にドはまりしていますが、彼らのドライブ感溢れる曲を聴きながら、先日は長野県と群馬県の境、上信国境の『四阿山』と『根子岳』に登ってきました!
この二つの山は以前活動していた火山であり活火山ではありませんが、周りには草津白根山(警戒レベル2)や浅間山など活発な活火山があります。これから活火山に登ることもあると思うので、気象庁が発表している火山情報について調べてみました。
※火山ガスなど幾つか追記しました(6/24)。
Contents
四阿山・根子岳(あずまやさん・ねこだけ)
前週にテン泊した常念岳からの四阿山の情景があまりにも印象的で、「これはいってみないと!」と思い立ち行ってきたのですが(百名山のハシゴですねw)、
左:四阿山(根子岳方面から)、右:根子岳(四阿山ー根子岳の鞍部から)
当日はまずまずの天気のもと、白樺と熊笹の登山道にツツジや山桜が咲き、目を楽しませてくれました。
しかし、一番楽しみにしていた草津白根山、浅間山方面の眺めは、雲に覆われてイマイチでした。残念。
登山道を歩いていた際、比較的新しい火山岩や火山地域によくみられるローム状の泥が目立ちました。
最近の文献を調べてみると、四阿山・根子岳は80万年前~30万年前に断続的に活動していた火山であり、火山活動後期において北方向に開いた崩壊地形が形成されたそうです(西来ほか、2014)。この崩壊のお陰で「米子大瀑布」があるのでしょうね。
「そういえば、この辺は浅間や草津などの活発な火山の狭間。これから登る山には活火山が含まれるかもしれないから、復習しておかないと!」
と思いましたので、今回の記事では、日本の活火山と気象庁の火山情報についても見てみたいと思います。
日本の活火山
世界には約1,500の活火山がありますが、日本には111もの活火山*1が分布し、実に世界の活火山の約8%が日本に集まります(日本の国土面積は地球の総陸地面積の0.25%)。
出典:内閣府
出典:気象庁
火山情報
気象庁では、これら111の活火山を対象として、「噴火警報・予報 表/図」を発表しています。
出典:気象庁
また、「気象庁|火山登山者向けの情報提供ページ」では、噴火警報発表中の火山と1週間以内に情報を発表した火山が示されています。下図では、6月21日に活動解説資料が発表された御嶽山が掲載されています。
出典:気象庁
主な活火山の噴火警戒レベル(2019年6月23日)
レベル3:桜島
レベル1:御嶽山など、上記以外の活火山(図には表記されていません)
※小さな島嶼部は除外。
噴火警戒レベルについては、下図のように5段階に細分化されます。
出典:気象庁
火山活動に伴う現象(出典:内閣府)
一口に火山と言っても、たくさんの形態の火山が存在し、またその噴火に伴う現象も様々です。下記は内閣府がまとめた危険性の高い火山活動による現象です(オレンジの文字は私のコメントです)。
1.噴火現象*2
2000年の有珠山噴火(マグマ噴火)は避難誘導がうまくなされ死者0。一方、2014年の御嶽山噴火は水蒸気爆発により戦後最悪の被害を出しました。
2.火砕流
高温のガス(数100℃)と火山灰・軽石等が山腹を高速(時速100㎞以上)でなだれ下る現象。
火砕流には主に2タイプあります。一つは溶岩ドームの崩壊によるもの。もう一つは噴煙柱の崩壊によって発生するもの。
1991年雲仙普賢岳噴火では前者の火砕流による被害が発生しました。2014年の御嶽山噴火では後者の火砕流が発生したそうです。
3.火山泥流
噴火による火口湖の決壊や融雪などにより発生した泥水が流れ下る現象。
1984年のアイスランドでは、氷河の下にあった火山が噴火し、氷河が融けて発生した泥流(ラハール)によって、日本の著名な火山学者が亡くなっています。この事故で亡くなられた柵山雅則先生は、火山の噴火メカニズムの研究において世界の第一線で活躍されていた方でした。先生の提唱したマグマ混合モデルは、現在も多くの研究者によって支持されています(私も度々引用させていただきました)。
4.津波
噴火に伴う山腹の崩壊によって生じた土石が海に流入したり、海底火山で大規模な噴火が発生したときに津波が発生することがある。
2018年12月のクラカタウ火山噴火・津波(インドネシア)や、1792年の島原大変肥後迷惑(眉山の山体崩壊に伴う津波)など。
他に、火山ガス(硫化水素、二酸化硫黄や二酸化炭素など*6)の危険性も。
火山ガスが日常的には一番危険かもしれません。
私の恩師は、火山地域を調査していた合間に自分たちで掘った温泉に入浴していたところ、硫化水素ガスによる中毒になりかけたそうです……(鼻まですれすれで入っていたら、急に視野が暗く……*7)。
このように火山ガスは空気よりも重いものが多いので、くぼ地(火口や石灰岩地域のカルスト地形のドリーネ等)などに濃集します。火山に限らず、周囲よりも低い地形に下りる際は気を付けましょう*8。
また、火山ガスは水溶性のものが多いので、濃度が高そうな時は、水で濡らしたタオル等で口や鼻を覆うと効果的な場合があります。
草津白根(むかーし、サンプル採取に同行した際に撮影)
以上のように、火山を登る際は、噴火だけでなく、火山活動によって引き起こされる様々な現象にも気を付ける必要があります。
登る山が火山であるか調べてみましょう
多くの被害を出した2014年の御嶽山噴火では、火山性微動が頻発していたにもかかわらず警報を引き上げなかった問題などもありますが、御嶽山が火山であることを知らない登山客もいたそうです。
政府や専門家による啓発活動も重要ですが、下界とは違い、登山は自然を相手にするのですから、それ相応の準備・対応が登山者にも求められます。
ですが、そんなことを言われても、
「これから登る山が活火山なのか?」
「もし活火山であった場合に、火山情報はどこで調べたらよいのか…?」
多くの登山者は、自身が登る山がどんな山なのか知らない、またはどのように知ることができるのか、その術を知らないことがあると思います。
そこで、活火山の情報は、以下の「気象庁の防災情報」や「日本気象協会の火山情報 tenki.jp」のウェブサイトが有用になります。
これらのサイトには、活火山の一覧とその警戒レベルが記載されています。
また、「気象庁|知識・解説 火山」や上記の「日本気象協会|火山情報 tenki.jp」では、それぞれの活火山の特徴が解説されており、噴火の規模・歴史や災害の例について知ることができます。
さらに、以下の地図では「噴火警戒レベルが運用されている45火山」を示していますが、
出典:気象庁
これらの火山には、ハザードマップを掲載したリーフレットが以下の気象庁のサイトで用意されています。
リーフレットには警戒レベルに応じた入山規制区域等が示されていますので、事前にダウンロードして目を通しておくと良いかもしれません(各自治体が用意している場合もあります)。
おわりに:登山計画を立てる時に…
以上、火山情報について述べてきましたが、安全な山行計画を立てる際に、以下の事を付け加えることをお勧めします。
- 自分の登る山が火山かどうか調べる。→気象庁|活火山とは
- 噴火警報・予報など火山情報を見る。→気象庁|火山登山者向けの情報提供ページ
- 時間があれば、リーフレット等を見て、その火山の規制範囲や特徴を知る。→気象庁|各火山のリーフレット(規制範囲) & 気象庁|知識・解説 火山 or 日本気象協会|火山情報(規制&特徴)
- 登山の際には、火山活動の各現象(特に火山ガス)に留意して登れたら言うことなし!
実際は2までで十分だと思います。
ですが、火山は恐ろしい一方で、様々な恩恵を我々にもたらしてくれます。その恩恵が日本の文化を育んできました。
防災の面だけでなく、せっかく山に登るのですから、その土地の風土に大きな影響を与えた山について調べてみると、登山の楽しみが広がるかもしれませんね。
レベル2に引き上げられる直前の箱根大涌谷(20190516 金時山より撮影)
引用文献
西来 邦章, 竹下 欣宏, 田辺 智隆, 松本 哲一(2014)中部日本,四阿火山のK-Ar年代:四阿火山の火山活動史の再検討. 地質学雑誌, 120巻, 3号, p.89-103.(リンク、J-STAGE)