山と愛蘭土 ☘ Sliabh & Éire ☘

山の歴史やアイルランドの文化を綴っていきます

【アイルランド旅行】愛蘭土のやうな田舎へ行かう


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「あの丘の向こうには何があるんだろう?」

それは昔のこと。ハリエニシダの小さな花の黄色と牧草の緑に彩られた4月のアイルランド。ふと思い立ち、ちょっと気になるあの村まで、ホストファミリーの家から田舎道を自転車散歩。1日の中に四季があると言われる、じゃじゃ馬なアイルランドの天気も、今日はサイクリング日和。

 

「ちょっと疲れた……あのパブで休もうかな」

上下左右にうねる田舎道を弾丸のごとく過ぎ去っていく車に肝を冷やす。それでも周りの景色を楽しんでペダルを漕いでいると、徐々に脚も疲れてきた。集落に入ると、茅葺き屋根の古民家の横に、新築されたパブの壁の白さが目に止まった。明るい店内に入り窓際の席に腰を下ろすと、数組の先客が周りの席で会話を楽しんでいた。

 

「あれ、こんな昼に歌声……?」

日に5杯は紅茶を飲むアイルランド人たちと一緒に暮らしていると、コーヒーが恋しくなり店主に注文する。マグカップに入って出されてきたインスタント・コーヒーの味に、「いつものパブ・コーヒーw」と安心していると、向こうの席から歌声が聞こえてきた。

 

「若者達が、お爺さんの歌を楽しそうに……?」

渋く響く声の方へ振り向くと視線の先には、青年達に囲まれたお爺さんが地元の歌を披露していた。お爺さんが歌い終わると青年達から称賛の拍手が送られた。お爺さんも満足そうに青年達と話している。「これでおしまいかな?」と思っていると、青年達はまたお爺さんに地元の話をねだり、お爺さんも嬉しそうに応じる。そしてまた歌が始まった……

 


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「パブのコーヒーも美味いもんだ!」

そのほっこりとした情景に、コーヒーのほろ苦さがいつの間にか消え…… パブを後にし、目的の村に向かってペダルを踏み込む……

 

続く……かも?

 

一応、実話です。10年以上前、滞在先の街の郊外をサイクリングしたときの一コマです。アイルランド人の気質を表す場面に出会い、いまだに記憶に残っています。

 

(外出先からスマートフォンで投稿。慣れないなあ)