【アイルランドの伝説】悪魔にかじられた山 "the Devil's Bit Mountain"
アイルランドの首都ダブリンから第二の都市コークを結ぶ列車に乗り1時間半ほど経った頃、右手に山頂がえぐられた山が見えてきます。山の名を "the Devil's Bit Mountain" (悪魔にかじられた山、標高478m)と言います。
ブレクジットの北アイルランド国境問題で揺れるアイルランド共和国には、各地にたくさんの伝説が残っています。この特徴的な山にも数多くの伝説があり、その一つは言います。
むかし、アイルランド島に住んでいた悪魔達は、イギリスからやってきた聖パトリックとの戦いに明け暮れていました。聖パトリックはキリスト教を広めるため、各地にいた悪魔と戦っていたのです。その悪魔の中の一人が、どうしても勝てない聖パトリックに苛立ち、自分の住む山の頂上を食いちぎりました。山頂には悪魔の大きな歯型が残り、これが 「悪魔にかまれた山 "the Devil's Bit Mountain"」の名前の由来となりました……
お話にはまだ続きがありますが、それはまたの機会に。
この山にはアイルランドの知人に誘われて何度か登ったことがあります。頂上からの眺めは「ジ・アイルランド」。氷河で削られたなだらかな起伏に、牧草地が地平線まで続く緑の景色はアイルランドを代表する景観です。
見えにくいですが、写真中央に見える塔の左に小さな石があります。アイルランドがまだイギリスだった頃、弾圧されていたカトリック教徒がミサを行うために置いたものと言われています。この山はイギリスに反抗する人々の舞台となっていました。
アイルランドにはたくさんの伝説が残っています。日本とは違った素晴らしい景観があります。この素晴らしい景観を眺めながら、その地に残る伝説に思いを馳せ、これを語り継ぐアイルランドの人々の暮らしを考える。旅のおもしろさかもしれませんね。