【爺ヶ岳】6/12(水)から『柏原新道』開通!+山頂からの写真と地質のお話
季節は梅雨に入りましたが、北アルプスの多くの山は開山祭を終えました。主要な山小屋も再開され、夏道も下部を中心に開通しているようですね(上部は冬道の所もありますが)。
北アルプス北部、後立山連峰でも徐々に夏に向けた準備が進んでいるようです。爺ヶ岳のベースとなる「種池山荘」のウェブサイト「鹿島槍ヶ岳、爺ヶ岳、鳴沢岳、針の木岳へ行こう」、11日付の「最新情報」によると、6/12(水)から「柏原新道*1」が通行可能となるそうです!
写真は2016年10月のものです 。
「種池山荘」と同系列の「冷池山荘」は、6/14(金)から営業を再開します(新越山荘は6/29土頃)。
同じく2016年10月撮影。
山荘ウェブサイトによると、スタッフさんによる除雪がされていますが、上部はまだまだ残雪が多く6月中はアイゼン・ピッケル等の携行が必要だそうです。
ですが!いよいよ爺ヶ岳を普通に登れる季節になってきましたね!
私のアイゼン・ピッケルは共に腐っており(笑)、雪用の装備はチェンスパとポール。しかも技量・体力共に落ちているので、無理せず様子を見て6月下旬に行ければと思っています。今の状況で突撃したら、滑落して扇沢にダイブです(笑)。
ばっちぃ……ちゃんと整備すれば使えるかもしれないけど……アイゼン(逆だw)は新しいの欲しいなぁ、来シーズンかな。
爺ヶ岳登山口の駐車場(扇沢)までのアプローチですが、片側1車線の広い道で余裕をもって駐車場まで運転できます。駐車場も多く広いので、ハイシーズンを除けば、麓の大町市からのアクセスもかなり良いと思います*2。
公共交通機関も路線バスから夜行バスまでいくつか選択肢があり、困ることはないと思います。詳しくは、種池山荘ウェブサイトのバス時刻表で。
登山口脇の橋の右岸(西)側にも20-30台ほどのスペースがあります。
爺ヶ岳の一般的な登山ルートである登山口(1,350m)~(柏原新道)~種池山荘(2,460m)~爺ヶ岳南峰(2,660m)は、柏原新道上部の残雪が少なくなる7月中旬頃から初心者おすすめのコースとなります。柏原新道はよく整備されており、難所も上部「ガラバ」周辺の登山道と雪渓だけであり、それ以外は歩きやすい道です*3。ただし、新道は樹林帯の谷あいの斜面を進むので眺めはあまり期待できませんので*4、山荘までのお預けです。
また、扇沢をベースにして三大雪渓の一つ「針ノ木雪渓」を登り詰め、針ノ木岳・蓮華岳へ!そして新越山荘*5に泊まり、針ノ木岳ー爺ヶ岳間を縦走することもできます。
閑話休題、石の話です。興味ない方は読み飛ばしてください……
柏原新道では「溶結凝灰岩」という火砕流*6の堆積物が出てきます。鹿島槍を除く後立山連峰南部、爺ヶ岳から五龍岳付近は、上記の石を含めた火山岩からなり、箱根や阿蘇などに見られるカルデラを100万年以上前に作っていたと考えられています*7。
さらに爺ヶ岳頂上付近には、ほぼ垂直に傾いた湖底堆積物(おそらくカルデラ湖)が登山道沿いに現れます。一方、これら火山性の堆積物とは異なり、種池山荘や鹿島槍ヶ岳山頂では世界でも屈指の新しい花崗岩*8が露出しています*9。
火山岩と花崗岩の境目は、種池山荘・冷池山荘・キレット小屋付近や、柏原新道上部の夏まで残る雪渓付近になります。風化していなければ、火山岩と花崗岩は見た目が結構異なるので、歩いている最中に石の変化に気付くかもしれません。
これらの石の分布・産状は、この地域の隆起量と変動方向がいかにもの凄いかを物語っています*10!とりあえず、花崗岩の年代値と花崗岩形成時の深さから最大隆起量を簡単に見積もると、年間8㎜前後になります(えっ?いくらなんでも…w)。
とにかく、北アルプスの形成史を考えるうえで、この地域は非常に大切なフィールドとなります。爺ヶ岳おもしろい!(と感じて頂けたらいいんだけどw)
石の話おわり!
3~4時間かけて新道を登り切った種池山荘からの眺めは素晴らしいです。しかし、さらに山荘から30分ほどの爺ヶ岳南峰からは360度の大展望が広がります!迫力の剱岳や立山はもちろん、北アルプス南部から遠く富士山も望めます!
眺めを楽しんだ後は、山荘に帰って生ビールと本格ピザ*11が楽しめます!あまりの素晴らしさ&居心地の良さに帰れなくなっちゃいます!(笑)
いつまでも見ていたい。(この平坦面は主に北アルプスの隆起・浸食そして堆積作用で出来たのか~ごにょごにょ
このように爺ヶ岳は、アクセスが良好でほとんど難所もなく、それでいて素晴らしい眺めを満喫できるので、北アルプスの中でも比較的楽に山の醍醐味を味わえる山ではないでしょうか!*12
さらに下山後の温泉も、選択肢が豊富です!
- 大町市コミュニティセンター上原の湯*13(500円、9時ー20時、休館日:第2・4火曜日)
- 大町温泉郷 薬師の湯(700円、10時ー21時、7月~10月は7時ー21時)
- ゆ~ぷる木崎湖(650円、7時ー21時、8月無休)
- 葛温泉 仙人閣(700円、11時ー19時)
- 葛温泉 高瀬館(700円、10時ー20時)
- 葛温泉 温宿かじか (800円、10時ー15時)
※休館日は記載のあるもののみ。上記の温泉の源泉はすべて高瀬川の葛温泉です。
もちろん宿泊施設も、大町温泉郷や木崎湖温泉、葛温泉などに旅館・ホテル・民宿が多数あります。
個人的に爺ヶ岳は、北アルプスの中で何回登ったか覚えてない程一番登っている山であり、思い入れもあります。ですので、登山を再開した今シーズンは、日帰り登山からテン泊山行まで十二分に爺ヶ岳を味わいたいですね!あ、あと鹿島槍ヶ岳も!
さいごに爺ヶ岳南峰からの眺め!(2016年10月撮影。Lrで自分好みに現像)
以下6枚は頂上からのパノラマ(焦点距離:24.5㎜)。南東方向から時計回りに。
以降、注目の山のクローズアップ(焦点距離:~130㎜)。南方面から時計まわり。
スバリ岳と赤沢岳間の稜線から薬師岳。
立山。カール上の雪渓は氷河に認定されました。
剱岳。手前は黒部別山。同じく剱岳の雪渓も氷河に認定されました。
爺ヶ岳から流れ下る「棒小屋沢」は広い河原をつくるが、やがて急流となり十字峡で剱沢と出会い黒部川と合流する。そしていくつかの関西電力の発電所を過ぎ、富山平野に出ると広大な扇状地をつくり富山湾に注ぐ。上流からもたらされた栄養分は豊かな漁場をつくる(そうです)。
爺ヶ岳北峰と中峰、奥に北信五岳。
常念山脈山麓の霞む山ひだ。こういうの好きです!麓からもいい雰囲気に霞むんだよね~
この夏、爺ヶ岳に登ろ~♪♪♪
*1:立山黒部アルペンルートの扇沢駅と爺ヶ岳を結ぶ登山道
*2:お盆などは満車となり、篭川下流の駐車場からシャトルバスが出ることもありますので、ご注意を
*3:もちろん油断はしないように。心配であればチェーンスパイクなどの軽アイゼン携行も考慮してください
*5:テン場はありません
*6:1991年の雲仙普賢岳噴火や2014年の御嶽山噴火でも発生
*7:滝谷ー穂高コンプレックス同様、浸食により地形は残っていません
*8:マグマ溜りの化石、噴火しなかったマグマの残りとも
*9:北アルプスにはこの他にも、上高地付近に第四紀花崗岩が露出します→新しいマグマ溜りが地上に露出=隆起量がすごい!
*10:関電トンネルの破砕帯ー針ノ木峠ー船窪岳と南沢岳間のコルー高瀬ダムが、おそらく現在の変動場→活断層=地震頻発。小規模な地震が多い地域です
*11:昔よく登ってた時はありませんでした
*13:わっぱらのゆ