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山の歴史やアイルランドの文化を綴っていきます

南木曽岳:中央アルプスの眺めと意外な出会い!May 23, 2019【金太郎ゆかりの山③】

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金太郎ゆかりの山に登ろう第3弾!(いつのまに……)

今回は、信州は木曽地方の里山を代表する「南木曽岳(なぎそだけ)」!

写真は南木曽岳の摩利支天からの眺めです!遠くの緩やかな山頂は恵那山です!手前は花崗岩

 

麓には中山道の宿場「妻籠宿(つまごじゅく)」や「馬籠宿(まごめじゅく)*1」があり、観光地としても人気な地域となります。最近は多くの外国人観光客が訪れ、中山道トレッキングも人気のようです。日本人よりも彼らに出会う機会の方が多いそうですよ。

さて、長野県の南木曽町にある「南木曽岳」は、地元のボランティア団体「南木曽山士会(なぎそさんしかい)」によって大切に守られている山です。最近は、山と渓谷社が設立した「日本山岳遺産基金」を活用して登山道の整備が実施されたそうです。

あれ、きんたろうのお話は?

 

富山旅行の話をすでに記事(いずれ登山記録もアップします)にしていますが、遡ってその前週に登った南木曽岳です。今回、ちょっと長めです~(5,000文字)<(_ _)>

 

Contents 

 

 南木曽岳登山ガイド

南木曽(なぎそだけ) 難易度:★★★☆☆ ※急登・急な木製階段あり!

【所在地】〒399-5301 長野県木曽郡南木曽町読書

【アクセス】南木曽岳「蘭」登山口まで、東京方面からは飯田山本ICから50分(30㎞)、名古屋方面からは中津川ICから50分(30㎞)

山頂標高】1,679m(二等三角点は1,677m)

登山口標高】960m(南木曽岳「蘭」登山口)

コース距離】8.9km (「登山道」と「下山道」利用。男滝・女滝経由)

参考コース時間】計5時間(休憩・滝見学・石観察含む)

【展望良さ】★★★★☆ (中央アルプス全域、北アルプス南部、南アルプス南部)

【山域地質】中生代白亜紀苗木・上松花崗岩(日本列島形成以前、大陸縁辺部のマグマ溜りの化石)。浦島伝説の上松の「寝覚ノ床」もこの花崗岩です。粗粒の黒雲母花崗岩で一様な岩石組織できれいでした。でも石を勉強してた人としては、もう少し岩相変化が欲しかったかな。

 

 

南木曽岳ハイライト

樹林に覆われた山頂からの眺めは全くありませんが、見晴台避難小屋そばの展望台からの眺めは素晴らしいです!

 

避難小屋から中央アルプス

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剣岳(しかもロープウェイ利用)しか登ったことがなく、木曽山脈に暗いです……

 

見晴台からの御嶽山

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噴気が見えます。2014年の噴火が…… 黒い点はウンカです。虫の季節ですねぇ

 

南木曽岳登山ルート

南木曽岳頂上までのルートは二つあります。

  1. 「蘭(あららぎ)コース」
  2. 上の原コース」

 「蘭コース」は、南木曽南の二つの急な尾根。「上の原コース」は、南木曽北西の長めの稜線を上がるルートになります。

 

今回はポピュラーな「蘭コース」を選択しました。

南木曽山麓蘭キャンプ場から舗装された林道を10分(2.2㎞)ほど進むと、営林署ゲート前にある「蘭コース」の駐車場に到着です。

 

営林署ゲート前には二つの駐車場があります。営林署ゲート前の駐車場には5台、100m下の駐車場には10台ほどのスペースがあります。

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左:営林署ゲート前の駐車場。右:100m下の駐車場

 

「蘭(あららぎ)コース」概要

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「蘭(あららぎ)コース」は二つのルートからなります。

南西の尾根を上がる「登山道(普通に使う登山道と区別がしづらく混乱しそうです、笑)。南東の尾根を下る「下山道」。なお、両ルート下部は共通の道を通ります。

おそらくどちらを登り下りしても良いのだと思いますが、今回は名称の通りに進みました。里山としては、どちらも急なルートとなりますので細心の注意を払って下さい。

※これから、コース名の「登山道」はこの様に鍵括弧を付けて、一般的な名称の登山道と区別します。

 

コース概要

  1. 駐車場の避難小屋で登山届提出して、すたーと!
  2. 林道(まで0分)
  3. 登山口(まで15分)
  4. 登山道分岐点(まで10分)から「登山道
  5. 南木曽岳頂上(まで90分)
  6. 展望台(まで3分)と避難小屋の展望台(まで5分、そして昼食!)
  7. 摩利支天(まで15分)から「下山道
  8. 登山道分岐点(まで60分)
  9. 3→1逆順で駐車場。ごーる!(まで20分)
  10. ありがとうございましたー!

※写真を撮ったり石を見たりしているので、時間はおおよその目安として参考にして下さい。

 

「登山道」(蘭コース)

まずは簡単な概要を。

登山道分岐点までは「登山道」「下山道」は共通したルートとなります。

分岐点まではのどかな林道や歩道を歩きます。分岐点以降の「登山道」では、前半は谷筋を上がり、中盤から尾根筋を上がり山頂に至ります。樹林帯を歩きますので展望は期待しないと良いでしょう。

鎖場もいくつかありますが、基本的に急登+木の階段が多く、階段のステップが狭いこともあるので、バランスを崩して転倒等しないよう気を付けてください。

 

それでは詳しく見ていきます!

駐車場脇には南木曽山麓避難小屋があり、ここで登山届を提出できます。隣にはトイレもあります。

登山届を書いていると後ろに紳士が……後に同じコースを辿り、下山後になんと……

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営林署ゲートは林道と散策道の二手に分かれますが、5分程で合流します。滝見学も兼ねる方は散策道へ。

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15分ほど歩くと林道と登山道の分岐点、「登山口」に到着です。

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左の道が登山道、右の道が林道 

 

看板がいくつか立っていましたが、なにやらすごいことが書かれています……

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格言です!

 

大切な言葉ですね!ビビりな私ですが、ついつい忘れがちに……肝に銘じて登山道を進みます! 

 

堰堤前の木橋を渡ると本格的な登山道となります。さらに10分ほどで「登山道」と「下山道」の分岐点に。 

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木橋からは南木曽岳が!:分岐点の前には積み上げられた木材が。木道の修復用かな?

分岐点を左に曲がりしばらく谷を歩きますが、すぐに本日の目的の一つ「金時ノ洞窟」に。

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大岩の下からは冷たい清流が流れ出ていました!石清水~

ここから先は、徐々に勾配が上がり木の階段が増えてきます。

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喉の滝、見つけられませんでした……

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分岐点からは谷筋を上がってきましたが、20分~30分で尾根筋に登山道は変わります。 急登が続きます。

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:木の階段がつづく!金時山に続きここもか!悠仁親王元号は何になるのでしょうか~?(不謹慎…?)

 

「登山道」のハイライト、鎖場!でも、横に木橋があるのでエスケープ!

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途中、恵那山と麓の南木曽町が!

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あの下を中央道の恵那山トンネルが通るのか~と思ったら、北側を通るんだ(笑)

 

木橋から20分ほど木の階段かいだんカイダンを上がると「かぶと岩」に。

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あの岩かな?いかにもな花崗岩的な形!

 

かぶと岩から15分弱で山頂に!でも、周りは木の中!木曽ですね!

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それでも二等は上等です!

 

頂上には休憩スペースがありましたが、そろそろお昼時。ご夫婦が昼食中でしたので先に進みました。頂上からすぐの「見晴台」も、やはり昼食休憩されてる方たちが……後ろをお邪魔して写真を撮って避難小屋に進みます(昼食どこで食べようかな~お腹空いた~)。

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花崗岩の一枚岩から御嶽山南木曽町木曽川流域)が一望できます!

 

お昼たいむ@避難小屋前の展望台 

程なくして赤い屋根の避難小屋が見えてきます。ちょっと山っぽい!(いや、やまだけど…?

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避難小屋の立派な屋内と環境保全型トイレ。急に天気が崩れて停滞しても安心です!

 

避難小屋の前にある展望台、眺めが素晴らしい!だれもいない!静かなる山、山、山!

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上2枚中央アルプス南アルプス南部。北アルプス南部

 

そして、ようやく昼食!わーい!

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熊笹の向こうは恵那山かな。(富山から帰宅後、モンベルの青いスポーク洗ったら折れた、泣)

 

いつものマルタイラーメンと鮭むすびを食し、「そろそろレパートリー増やしたいなぁ」と思案していると、単独行のおじさんが隣で弁当を広げ始めました。

「今日は素晴らしい天気と眺めですね~♪」(営業すまいる^^)

とお決まりのセリフで会話を始めると、しばらくおじさんの山談議が~っ!

大阪から来られたおじさん、日本アルプス全部周ってました!!!

 

「すごいな~」と驚いていたら、「登山道」を歩いていた方達、頂上や見晴台でご飯を食べていた方達や、山ガールのパーティー等、続々と展望台に人、人、人!!!

なんだか山頂がパーティー状態に!先ほどの静寂がウソのよう~

ちょっと伸びたラーメンの最後の汁を啜り、手早くパッキングすると「下山道」へ~

 

「下山道」(蘭コース)

避難小屋からは、しばらく熊笹の中アップダウンのある 広い稜線を歩きます。摩利支天を過ぎると、かなりの急坂+木の階段+鎖が連続します。「登山道」よりも勾配がきついです。下りは登りよりも転倒・滑落のリスクが高まりますので、必要であれば階段をハシゴの様に下りた方が安全かと思います。カッコ良さよりも安全を優先してください!

 

それでは、くわしく!

南木曽岳は大まかに二つのピークからなっています。西の南木曽岳(三角点1,677mと最高地点1,679m)と東の摩利支天(1,675m)。その間は熊笹が広がります。この二つのピークの鞍部に水場があります。

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ヤブこぎは卒業したので行きませんでしたよ(笑)

 

水場分岐を過ぎ、しばらく樹林帯を歩くと三叉路になります。直進すると摩利支天の展望台。西に折れると「下山道」本道となります。

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1分ほど歩くと摩利支天の展望台に。恵那山を中心に南方の眺めを楽しむことができます。しかし、風化して丸くなった花崗岩の巨岩の先には、柵がないので転落に気を付けてください。

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 真ん中の石をよじ登ると……(転落には十分気を付けて

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写真左上から、東>南>西南アルプス南部、恵那山、中津川方面が見えます。
 

本道に戻り、しばらく進むともう一つの展望台があります。ここはハシゴを登ってすぐです。この展望台には花崗岩の小さなステージがあり、その下は崖になっています。くれぐれも……

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この展望台以降は尾根沿いを下りますが、急な下り坂+断続的に木の階段+鎖となります。「登山道」以上に急ですので慎重に下ってください。

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2番目の展望台から40分ほど急坂を下ると、「登山道」との分岐点に到着です!ここからは登りと同じ道を逆方向に辿り駐車場へ!ゴールです!

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木道が見えたら、すぐに分岐点! 

 

早めに着いたら、駐車場近くの男滝と女滝を見学するのも良いでしょう~

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:男滝。:女滝

 

 南木曽岳のすとーん!

時間に余裕があったので、分岐点下の堰堤の河原で石を観察しました。この山はほとんど同じ花崗岩から出来ているようです。苗木・上松花崗岩といいます。左の写真のように粒が粗く、肉眼では黒雲母(黒)、斜長石(白)、カリ長石(ピンク、見づらいかな)、石英(灰)が確認できます。

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:通常の岩相。:ペグマタイト状。カラビナの長径は約7㎝ 

 

花崗岩とは、地下のマグマ溜りが固結してできたマグマの化石です。大陸地殻の多くはこの花崗岩からなると考えられています。逆に言えば、花崗岩があるということは、そこに大陸があったということです。

この苗木・上松花崗岩は日本列島ができるよりもずっと前、6,000万年以上前の大陸の縁辺部で出来たと考えられています。6,000万年以上前というのは、恐竜がまだ地球上を闊歩していた時代です!すごいな~気が遠くなる~

なんてことを考えながら石を見ていたのですが、ほとんど同じような顔つき(業界用語、笑)。何か面白いのないかな~と探していると、右の写真のようにさらに粗くなった部分が!

ほほぉ~と観察していると、

「ペグマタイト*2ですか?」

その声に、「おおおぉ!!?」と振り仰ぐと、登山届を私の後に提出していた紳士が……

このお方、私の後ろをあまり間をあけずに歩かれていたお方。

お話を伺うと、某有名大学の地質の先生でした!

道理で、健脚、いやマニアックな言葉をご存知だったのですね~

 

おわりに

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駐車場の募金箱に感謝も込めてチャリンとした後、シャンプーバイキング&露天風呂自慢の「大江戸温泉物語 ホテル木曽路*3 」で汗を流し、帰途につきました。

久々のきれいな花崗岩に満足しましたが(そこか?)、私がかつて所属していた世界の先生にお会いする偶然。石を調べていた時のわくわく感が少し蘇りました!(遭難死しそうだったから、戻れたとしても戻りたくはないけど~ 、でも石を見て山の成立ちを考えるのは楽しい!

 

南木曽岳は急峻な山道にもかかわらず、よく整備された登山道でした。地元の有志の方達の努力の賜物ですね!たのしく登山できたことに感謝です!!!

 

あれれ、ほとんど金太郎出てこなかったなぁ……しかも中央アルプスより恵那山だったし……

 

参考文献・ウェブサイト

はてなブログ

nagisodake.hatenablog.com

 

一般サイト等:

*1:島崎藤村の生家があることでも知られる。岐阜県中津川市。以前は長野県山口村。2005年に中津川市編入

*2:巨晶花崗岩。マグマがほとんど固結して残液の少ない状態で形成する。有用な金属資源を含むが、ウランなどの放射性物質も含まれる。

*3:日帰り入浴800円、無料のアイス付き!