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山の歴史やアイルランドの文化を綴っていきます

深雪に苦戦した【茶臼山@美ヶ原 2,006m】で、熊笹の食害から環境問題を考えた【山行記録】Apr 04, 2019

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 写真:茶臼山から車山気象レーダーと富士山(トリミング)

 

茶臼山、各都道府県に一つは有りそうなありふれた山名……

美ヶ原高原の南にも、この名をもつ山があります。

あまり注目されない山ですが、登山開始標高が高く、スギ花粉に汚染されていません(笑)。

スギ花粉症の私にとって、茶臼山は花粉に悩まされずにこの時期に登れる貴重な低山。

ということで先週行ってきましたが、予想外の積雪に……!(前も別の山で言ってたような…笑)

(毎度毎度同じような写真になりますが、日本アルプスは偉大です!)

 

 

山行ルート概要

2月に美ヶ原高原に登り、周辺の状況を知っていたつもりでしたが、茶臼山ルートは美ヶ原ルートとは様相が全く異なりました。その一つに積雪量の違いがありました。

 

ルートや各種データ

ルート:三城いこいの広場(1,415m)ー広小場ー茶臼山(2,006m)ー百曲がり園地(塩くれ場、美ヶ原台上)ー広小場ー三城いこいの広場

歩行距離:9.2㎞(GPSログ
所要時間:登り約3時間(コースタイム 1:50)、下り80分(同 80分)+稜線部の歩行時間タイムレス(笑)
最低標高:1,415m、気温:約0℃(10:00)
最高標高:2,006m、気温:約0℃(13:00)

写真の案内図では、下側のルートとなります。

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(登山道スタート地点の三城いこいの広場の案内板)

また、美ヶ原観光連盟の美ヶ原観光連盟公式サイト:登山では所要時間の入った簡易マップ (PDF) があります。

さらに、アルプス観光協会サイトでは、松本市の山岳地域も含めた地図・資料が数多く掲載され、美ヶ原地域の詳細なマップ (PDF) も見ることができます。

 

三城から茶臼山頂上まで

登山口から広小場までは、2月の美ヶ原高原登山と同様のルートを進みました。登り始めは2月と比べ雪が少なく、「今回は余裕!」と油断しておりました(笑)。

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 (左:三城いこいの広場オートキャンプ場内、右:オートキャンプ場からの登山口)

 

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 (閉鎖された無料キャンプ場の「広小場」。まっすぐ行くと茶臼山、左に行くと百曲がりコースを経て美ヶ原高原塩くれ場)

 

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(山の神様に安全祈願を) 

 

「雪が少ないから余裕でしょ!」と、広小場から本格的な茶臼山への登山道を登っていると、徐々に雪が深くなり、スキーのシュプールが。

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(登山道には新しいシュプールが雪の上に。それを踏み抜きながら進んでいると……) 

 

平日だったので、シュプールは先週末のものと思い、登山客は自分以外いないだろうと登っていたところ、人の気配が……!

見上げると登山者がっ!!!

びっくりしたっ!!!

(石を調査している頃は、人に会わないであろう状況で人に会うのが一番怖かった……)

 

その登山者は、私が辿っていたシュプールを残した方で、休憩がてらスキーを片付けているところでした。

「今年は例年に比べ雪が少なく、スキーでは登りづらいので徒歩で登る」とのことでした。私にとっては十分多かったのですが……

 

片付けているところを追い抜いた後は、まったくトレースの無い雪道、というか雪と森林…… 

しばらく木に巻かれたテープを頼りに登っていましたが、だんだんと分からなくなり……

次第に積雪量も膝ほどの深さから、腰まで埋まるほどに……

(先月の高ボッチ山でも同じことが、笑)

今回は天候も良く雪も安定していたので、直登しました(笑、本来は山頂まで斜面をトラバースします)

積雪量がこんなに多いと分かっていたら、積雪の少ない尾根筋を歩いたのですが……

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(上部斜面は腰まで埋まるほどの積雪量。苦しいけど楽しい!)

 

ゼイゼイ言いながら、深雪の急登を一歩一歩上がり稜線部に到達!

稜線上は先ほど追い抜いた方とは違うシュプールが二つあり(おそらく美ヶ原からの往復)、それ以外のトレースはありませんでした。

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(斜面から稜線に上がった直後。左上が茶臼山頂上) 

 

稜線は雪があるものの歩きやすく、

ようやく頂上に到達!やったー!

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 (茶臼山頂上から南方面の眺望。左から八ヶ岳、富士山、車山と鳳凰三山。前者3つは火山)

 

結局、雪の多さによって2時間弱のコースタイムを、3時間もかかってしまいました。

 

眺望について

茶臼山の展望は北隣の美ヶ原ほど良くありません。とくに北方面は、山頂の森林と美ヶ原によって遮られていました。

しかし、それ以外は東・南方面を中心に素晴らしいものでした!

 

茶臼山頂上からの眺め

東から時計回りに見ていくと、

東側には浅間山(2,568m、富士山よりも高い火山を作っていた時期もあるそうです)。

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南側には、南アルプス諏訪湖中央アルプスなど。

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そして、鉢伏山(1,929m)。

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さらに西側には乗鞍岳(3,026m、火山)。これより北は展望悪し。

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茶臼山ー美ヶ原台上間の稜線部からの眺め

山頂で展望を満喫した後、美ヶ原台上まで雪の稜線を楽しみました(かんじき持ってくればよかった)

茶臼山山頂から稜線部を下ると森林で隠れていた槍・穂高連峰が現れ、その景色の素晴らしさに、ちょっと進んでは写真を撮り、ちょっと進んでは……の繰り返し!

ぜんぜん進みませんでした(笑)。

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 (美ヶ原台上と槍・穂高連峰。左にスキーの方がチラリ)

 

何度見ても槍穂は見飽きない!

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松本市中心部、槍ヶ岳穂高連峰。奥穂は雲の中……)

 

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(左:台上から王ヶ頭と槍穂、右:台上の美ヶ原高原美術館

 

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(借りシュプールの先には美しの塔が小さく)

 

北斜面と南斜面の積雪量の相違

2月に美ヶ原高原に登りましたが、登山道に殆ど雪がなく快適でした。

cashel.hatenablog.com

 

今回の茶臼山登山では、登りに「茶臼山コース」、下りに美ヶ原台上から「百曲がりコース」を選択しました。この2コースでは、積雪量が大きく異なりました。

前々章で述べたように茶臼山コースは積雪量が多く、稜線直下では腰まで埋まるほどの積雪量。対して、百曲がりコースはちらほら登山道に雪が残るものの、大半は敷石の鉄平石が露出していました。

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(左:登りの茶臼山コース。右:下りの百曲がりコース。それぞれ進行方向と逆向きに撮ってます)

因みに、百曲がりコースは2月の美ヶ原では登りルートに使いました。

 

この積雪量の違いの原因は?

案内図や地形図をよくよく見ると、

  • 雪の多い茶臼山コースは北斜面
  • 雪の少ない百曲がりコースは南斜面

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(美ヶ原台上の案内板。マップ下部に百曲がりコース。最下部に茶臼山

 

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(美ヶ原台上百曲がり園地から茶臼山。手前が南斜面、茶臼山側が北斜面。積雪量の相違が一目瞭然)

 

この違いに気付けば、積雪量の違いも言わずもがなですね……

4月に入ったとはいえ、標高2000m級の山ではまだまだ気温が低く、日が当たらない北斜面は日中でも氷点下。北斜面に多くの雪が残っていることは十分予想できます。

今回の山行では、この積雪量の違いを考えると、南斜面の百曲がりコースを登り、稜線から茶臼山頂上に至るのが正解だったのかもしれません(でも、雪の中登るのも楽しい!)

(余談ですが、茶臼山コースは全くの不人気でしたが、美ヶ原方面はトレースがたくさんついており、その人気振りが窺えました。さすが百名山!)

 

以前、石の調査をしていた頃は、穴が開くほど地形図を見たり航空写真を立体視したり、時には断面図を描き、調査地域の地形や特徴を把握していました。

しかし、しばらく山に登っていなかったので、いろいろと忘れてしまっていることが多いようです。茶臼山が低山であることも油断に拍車をかけていたようです。

しっかりと下調べをして、安全登山を心掛けたいと思います。

 

おわりに:ラーメンと熊笹の食害

茶臼山頂上で、最近はすっかり定番となったマルタイラーメンを食べていると、先ほどの登山者の方が登ってこられました。

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(左端に浅間山、中央右寄りに荒船山。少し分かりづらいですが、奥の熊笹は茎だけです)

 

少しお話をしましたが、今年は雪が少ない為、山頂の笹が雪から露出し、鹿による食害が広がっているそうです。確かにそう言われてみると、葉がなく茎だけになった熊笹が至る所に……

「年々ハンターも高齢化が進み後継者もいない中、全国的に鹿の数が増えている」とも仰っていました。

登山中は石ばかりに気を取られ、植物に疎い私にとって勉強になるお話でした。

伺ったお話や既知の情報をもとに考えると、人間の影響で鹿を捕食する大型の肉食動物も減少したことによって(と言うよりも、この山域では殆ど存在しない)、従来の生態系のバランスが変化しているようです。加えて、今シーズンの雪の少なさが熊笹の食害につながったようです。

 

今回の山行では、人間の経済活動による影響が雪山にもみられ、眺望を楽しみながらのラーメン、しみじみ考えながら味わいました。

貴重な山頂でのひと時を、見知らぬ人との会話で過ごすのもいいものですね!

(環境問題の観点から食害と表現しましたが、鹿は食べ物を山頂で見つけ食べたに過ぎませんね)

 

ーここからは妄想ー

環境問題は人間から見たもので、地学的な視点からすれば環境問題は存在しない。人間の経済活動も生態系の一部と捉えれば、今回の現象も現在あるべき生態系で発生した現象の一つに過ぎないのかもしれない。だからといって、人間が好き勝手すれば巡り巡って自分の首を絞める環境になってしまうのだろう。現在そうなりつつあるように……

それよりも気になるのは、人間による地層の大規模な生物擾乱。この擾乱は、常に刷新されている日本列島では比較的短期間で消えてしまうかもしれないが、安定陸塊では地球が無くなるまでずっと残るのかもしれない。もしその擾乱を後続の知的生命体や宇宙からの使者(ほんといるのかな?)が見たら、我々人類をどのように評価するのだろうか……

とか、

日本列島の年齢からしたら今見てる山の年齢なんて、人間の年齢と犬猫の年齢の違いくらい差がある。短い寿命の日本列島から見ても、日本アルプスはもとより富士山は一桁も二桁も短い。だから仮初のこの尊い景色を楽しまなきゃ!って、自分が死ぬまであんまり変わらないんだけどw 

目の前の山々の年齢からしたら、人間の寿命なんてさらに四桁も五桁も短い。人間は多勢に無勢だと地球表面に影響を与えるけど、一人一人は蜻蛉のような存在? 地球と比べたら短かく儚い寿命なんだから、この美しい景色を存分に楽しまなきゃね!登山楽しい!

なんて、脱線して妄想するのも、地学的にたのしいものです(笑)