白皙の貴公子『甲斐駒ヶ岳』:白砂の登山道の先に待つ天上の世界には、伊豆半島衝突の…!Jun 26, 2019
東京と名古屋を結ぶ「中央自動車道」を走ると、必ず寄るパーキングエリアがあります。
そして、南アルプス北部の山々などを眺めることができます。
その中でもひと際存在感を放つ「甲斐駒ヶ岳」
以上これまでの写真は、今年の正月に八ヶ岳PA(下り)で撮影したものです。
山から遠ざかっていた時も、この辺りを通るたびに甲斐駒ヶ岳を見上げていたものでした。急峻で男性的な山容に無意識のうちに視線が吸い寄せられていました。
甲斐駒ヶ岳と言えば、白州の黒戸尾根から山頂に至るルートがよく知られています。しかし、黒戸尾根は早月尾根*1と並び長大な急登であり、久しぶりに山登りを再開した私には体力的に無理です!
ですので、今回の山行では反対側の北沢峠から山頂を目指しました。
Contents
甲斐駒ヶ岳頂上からの眺望
まずは、山頂からの眺めです!
当日は天気予報通りの晴れ。程よく出ていた雲がアクセントとなり、素晴らしいパノラマが360度広がりました!
パノラマ
広角で360度!北アルプスから時計回り!
北アルプス全景
八ヶ岳を中心にいろいろ!(北信五岳、霧ヶ峰、上信国境、秩父などなど)
秩父山系
富士山と雲の下の甲府盆地
ワンツースリー!(富士山、北岳、間ノ岳と南アルプスの山たち)
以上、パノラマ終わり!
ズームアップ
立山と剱岳。手前は燕岳、有明山、餓鬼岳、針ノ木岳、蓮華岳。(トリミング)
秩父山系
大菩薩嶺方面
富士山と鳳凰三山
御嶽山と白山
ため息しか出ない山頂の一時でした。
13時10分のバスに乗るため、頂上には30分程の滞在でしたが、もっといたかった~!
甲斐駒ヶ岳について
甲斐駒ヶ岳(標高2,967m)は、長野県伊那市と山梨県北杜市の境に位置します。長野県側では甲斐駒ヶ岳の事を「東駒ケ岳」と呼びます。
なだらかな山体を造る南アルプスの他の山と異なり、甲斐駒ヶ岳は峻険な山容を呈します。
また、山体を造る白色の花崗岩は、周囲の暗色の石からなる山から際立ち、その険しさと白さによって、南アルプスの貴公子とも呼ばれ、深田久弥の日本百名山に選ばれています。
甲斐駒ヶ岳に至るルートはいくつかありますが、「黒戸尾根ルート」と「北沢峠ルート」がメジャーとなります。
白州の尾白川から上がる「黒戸尾根ルート」は、標高差2,200mもあり、日本屈指の長尺の登山道となります。一方、「北沢峠ルート」は標高2,030mの北沢峠*2が開始地点となり、比較的容易に頂上に達することができ、人気の登山コースとなっているようです。
今回の甲斐駒ヶ岳登山は、後者の「北沢峠ルート」を選びました。
登山道状況(北沢峠ルート、頂上直下は巻き道コース)
「北沢峠ルート」のグレーディング*3は、仙丈ヶ岳と同じく3C*4となります。
しかし、
- 岩稜帯が多い(鎖場は無い)
- 頂上直下の滑りやすい道(巻き道)
を考えると、仙丈ヶ岳よりも難易度は少し高いと思います。特に、直登ルートを選択すると岩登りの覚悟が必要です。
北沢峠から駒津峰まで
登山開始は、昨日の仙丈ヶ岳登山口の反対側、北沢峠のこもれび山荘脇の登山道からです。
甲斐駒ヶ岳までに双児山(標高2,649m)と駒津峰(標高2,752m)の二つのピークがあります。
双児山までは樹林帯を歩きます。
トトロが体当たりでもしたの?w 大木がバキバキに折れてます。高度が上がるにつれて、イワカガミなどの高山植物も。
双児山(標高2,649m)からハイマツ帯となり、視界が開けます。
甲斐駒ヶ岳。あ、カサ出てますね~。
横を見ると、鳳凰三山!甲府盆地は雲の下。振り返ると、南アルプスの主稜線!
双児山から一旦下り、ハイマツ帯の斜面を登り返すと駒津峰(標高2,752m)です。
鋸岳の向こうに北アルプス!テンション上がります!
うぁ、岩だらけ…。どこ登るんだろう(ちょっとテンション下がるw)。でもソフトクリームみたい、美味しそう~ww
駒津峰から甲斐駒ヶ岳まで
駒津峰から甲斐駒ヶ岳の取り付きまでは、ちょっとした岩場になるので気を付けましょう。
左に六方石。逆光 (-_-)
六方石を過ぎ、最低鞍部から少し登ると、直登ルートと巻き道の分岐に。直登はある程度の登攀スキルが必要のようです。巻き道も真砂化*5した花崗岩で滑りやすく歩きにくいです。
もちろん巻き道を選びました(笑)。安全第一!って、山登ってる時点で……
深く積もった砂に足を取られないように、慎重に登りましょう。
急斜面、滑りやすい&眩しい!
上部は踏み跡が交錯する部分もあるので、目印をしっかり見て迷わないように。
あとすこし!
振り返ると、おおぉー!!白砂のビーチの先にはワンツースリーw
分岐から1時間ほどで頂上です!
お腹すいたーw
帰りはさらに滑りやすいので、慎重に下りましょう!
山頂や途中で「下りは大変だね」と話している方が多かったです。
甲斐駒ヶ岳を造る花崗岩、甲斐駒花崗岩と伊豆半島の衝突の関係
赤・赤紫色は花崗岩類を示す。出典:産総研地質調査総合センター、シームレス地質図V2に一部加筆(リンク)。
南アルプスの大部分を造る「四万十帯」
南アルプスの大部分は、2億年前から2,000万年前の海底に堆積した地層や少数の火山岩からなります。
これらの石は、海洋プレートが大陸プレートの下に沈み込む際に、海洋プレート表層部がはぎ取られて、大陸プレートに付け加えられた地層です。このような地層は「付加体」と呼ばれ、この地域だけでなく日本列島に広く見られます。
この地域に見られる付加体は「四万十帯」と呼ばれ、南アルプスの大部分を占めます。前日に登った仙丈ヶ岳もこの四万十帯の石から成ります。
以上の内容は、引用・参考文献の1によります。
伊豆衝突帯の花崗岩、「甲斐駒花崗岩」
一方、甲斐駒ヶ岳を造る石は花崗岩です。花崗岩とはマグマが地下深くでゆっくり冷え固まった石で、いわばマグマの化石です。
甲斐駒ヶ岳の花崗岩を「甲斐駒花崗岩」と言います(以下、甲斐駒岩体)が、最近の研究(引用・参考文献2,3)から、1,500万年前に四万十帯に貫入固結したと考えられています。この時代は、日本列島の原形が完成し、その本州弧に伊豆半島が衝突していた頃でした。
マグマが発生する場は色々とありますが、甲斐駒岩体を造ったマグマは、その衝突する伊豆半島(伊豆小笠原弧)を乗せたフィリピン海プレートの地下深くが融けたものです。
地下深くで発生したマグマは、上方にある四万十帯の中を、周りの石を融かし*6ながら上昇し定置・固結したものと考えられています。
四万十帯の石を捕獲する甲斐駒花崗岩
「え?甲斐駒ヶ岳と伊豆半島は遠く離れているけど?」とお思いになる方もいらっしゃるでしょう。
伊豆半島はフィリピン海プレート上にあり、そのフィリピン海プレートは大陸プレート(ユーラシアプレートと北米プレート)に沈み込んでいます。現在、甲斐駒ヶ岳の地域では地下数10㎞~100㎞の深さにフィリピン海プレートがあると考えられています(引用・参考文献4)。
伊豆半島の衝突(フィリピン海プレートの沈み込み)に伴って発生したマグマは他にもあり、この周辺では甲府岩体、丹沢岩体があります。さらに同じ時代に活動していたマグマとして、熊野、足摺岬、屋久島などにも同様の花崗岩類が見られます。
ちなみに、東海・東南海・南海地震さらに日向灘沖の海溝型の大地震を引き起こす主な原因としても、このフィリピン海プレートの沈み込みが考えられています。
まとめ
以上簡単にまとめると、甲斐駒ヶ岳の花崗岩は、1,500万年前に衝突していた伊豆半島(フィリピン海プレート)の地下深くが溶融し、四万十帯(まだ南アルプスは存在しない)を上昇・同化しながら定置した花崗岩である。その後、100万年前に始まった南アルプス地域の隆起によって、現在の姿を形成したと考えられるかもしれません。
おわりに
双児山から北沢峠を下っていると、物凄いスピードで登ってくる姿が!もしや?と思いよく見ると、前日に仙丈ヶ岳の下りでお会いしたお兄さん!
昨日は黒戸尾根から両俣小屋のテン場。今日は両俣から黒戸だそうです。バイタリティーの凄まじさに感服する限りでした。私にはいくら頑張ってもマネできないことだと思います。
ですが、登山は個人の力量に応じて楽しむもの。楽しみ方も、景色を楽しんだり、花や小動物を見て楽しんだり、はたまた石を見て楽しんだり(かなりマイノリティだと思いますが…)、さまざまです。
最近は、鳥にも興味を覚えて野鳥図鑑を買ってしまいました(笑)。今まで知らないことを覚えると、それまで見えていなかったものが見えてきますね。
ほんと、山は奥深いですね!
同日に訪れた白馬。この日はずっといい天気でした!
引用・参考文献
南アルプスの女王『仙丈ヶ岳』:3つのカールが造る雄大な山容の由来を調べてみる Jun 25, 2019
今回も梅雨の合間を縫ってテント泊をしてきました。
今月は常念山脈を登り体力的に余裕があると判断したので、さらに高山に慣れるために比較的楽に登れる3,000m峰を選びました。
- 登山口までのアクセスが良い
- 登山道が良く整備されており、危険個所が少ない
- キャンプ場がきれい、または水場がある
を基準に探してみると、「立山雄山(標高3,015m)」と「仙丈ヶ岳(標高3,033m)」の2山が候補に。
「立山」は室堂まで交通機関を使って上がれば、数百m登るだけで頂上に立てます。が、立山黒部アルペンルートは往復(扇沢ー室堂)で9,000円超……しかも、小学生の夏以来、何回も登っています。
一方、「仙丈ヶ岳」のある南アルプスは、高校生の夏に北岳に行って以来訪れていません。さらに、甲府駅での慣れない野宿の疲れの為に高山病になってしまい、肩の小屋止まり……
ということで、ほとんど訪れたことのない南アルプスの「仙丈ヶ岳」、プラス「甲斐駒ヶ岳」にテン泊登山に行ってきました!
※地図を掲載するの忘れてました……仙丈ヶ岳登山案内の項目にグーグルマップを載せました(6/30)。
Contents
仙丈ヶ岳と登山道からの眺め
平日のバスが8時始発&登り開始が10時半と遅かったので、朝の快晴から雲が出てしまい、中央アルプスや遠くの山は見られませんでした。しかし、鳳凰三山以外の南アルプスは良く見えて満足の眺めでした!
鋸岳(バリエーションルート)と甲斐駒ヶ岳
甲斐駒ヶ岳は、周囲の山の石*3と違って花崗岩からなります。白い!
アサヨ峰。鳳凰三山は雲の中……
北岳。最近の雪でしょうか、うっすら雪化粧。肩の小屋も見えます。
南アルプス南部の塩見岳~光岳。アクセス悪し&ルート長し……いつか行けたらいいな~
やはり、きれいな眺めを望むなら朝早くに登りたいですね。翌日は甲斐駒ヶ岳の予定です。天気予報は晴れ、そして早朝に発つ予定ですので期待大です!はれろ~!
以前の記事にも載せましたが、下山途中にライチョウを見かけました。
テン場が圏外でしたので、途中の小仙丈ヶ岳で、ブログの記事に頂いたコメントに返信して下山し始めると、甲斐駒ヶ岳をバックにライチョウが!
眼の上が赤いので、オスかな?
「うざい人間がいるなぁ。なにみとるんじゃぁわれ~」ガン飛ばされました(笑)
ずーっと監視されてました。
ライチョウには個体識別の為の足環がありました。人慣れしているようで、20分程でしょうか、私が立ち去るまでずっと同じ場所に佇んでいました。こちらに気付いても逃げる様子はありませんでした。巣で卵を温めるメスの為に監視していたのかもしれませんね。
仙丈ヶ岳(標高3,033m)登山案内
長野県伊那市と山梨県南アルプス市の境に位置し、赤石山脈の3,000m峰として最北になります。山腹に3つの圏谷*4を抱く穏やかな山容は「南アルプスの女王」と称され、深田久弥の日本百名山にも名を連ねています。
仙丈ヶ岳のグレーディング(長野県公表。H30. 4)は、北沢峠~仙丈ヶ岳~北沢峠で 3C*5(7.6h*6, 9.5km*7, 1.12km*8)となり、ある程度経験を積んだ登山初心者の方には最適な山になるのではないでしょうか。3,000m峰の登竜門的な山ですね。
もちろん、登山は慎重に。これまで登った山と比較し、そしてご自身の体力・技量を鑑みてトライできるようであれば、登ってみると良いかもしれません。
甲斐駒ヶ岳登山口とありますが、仙丈ヶ岳の登山口でもあります。
登山口(北沢峠)までのアクセス
仙丈ヶ岳への登山ルートはいくつかありますが、今回は一番人気の「北沢峠(小仙丈ヶ岳経由)コース」にしました。
伊那市仙流荘の横にある「南アルプス林道バスのりば」からマイクロバスに乗り1時間弱で北沢峠です。
道の向こうには鋸岳。始発時刻は時期により異なります。
北沢峠のこもれび荘。テント場はありません。山梨県側に少し下った長衛小屋にテン場があります。
行き帰りとも同じ気さくな運転手さんで、車窓から見える景色の説明をなさっていました。帰りは運よく助手席に座らせて頂き、運転手さんとたくさんお話をさせて頂きましたが、ご自身も良く登っておられるようで、南アルプスの様々な登山ルートを教えて頂きました。
右の写真:鋸岳の鹿窓。見えるかな…?
また驚いたことに、最盛期は10台×2で北沢峠までピストンするそうです。山梨側からも合わせたら恐ろしいことに……みんな泊まれるのかな?
最盛期にはこの数倍のバスが……
登山道状況(北沢峠~小仙丈ヶ岳~仙丈ヶ岳)
北沢峠からは5合目までは樹林帯を歩きます。道は山頂までよく整備されており、危険な個所は特にありません。登山者として標準的な体力があれば、歩いていれば山頂にたどり着くレベルです。
北沢峠の仙丈ヶ岳登山口。
ただし、五合目*9(大滝の頭)の分岐では、馬の背方面は事故の為に通行禁止でした。
この五合目を過ぎると、周りの植生は次第にハイマツ帯へと遷移し、展望が広がります。なお、この区間では登山道に雪が2ヶ所ほどありましたが、規模(長さ10m程)も小さくトレースがはっきりしていたので、気を付ければ危険のないものでした。
左には北岳、後ろには甲斐駒!よーく見ると、長衛小屋のテン場も見えます。
6合目まで来ると、完全に高山の世界に。
右奥のピークは小仙丈ヶ岳(2,864m)。
眺めの良い小仙丈ヶ岳でお昼を食べました。
この先はちょっとした岩稜帯(鎖場なし)もありますが、丹沢の表尾根など簡単な岩登りに慣れている方であれば全然問題ないでしょう。
小仙丈沢カールを左手に見ながら稜線沿いに登ると、右手に藪沢カールと仙丈ヶ岳山頂が見えてきます。
雪渓のクレバスが気になります……
藪沢カールとその底にある仙丈小屋を下に見ながら緩やかな稜線を回り込むと、やがて頂上に!
帰りは同じルートを通って、長衛小屋まで下山しました。 たのしかった~!
宿泊施設
北沢峠周辺には3つの山小屋があります。北沢峠のこもれび荘、伊那市側にある太平山荘、そして南アルプス市にある長衛小屋。
それぞれの山小屋の間隔は歩いて10分程。こんな至近距離に多いなぁと不思議に思いましたが、伊那市長の寄稿文・講話集を読むと何やら複雑な背景がありそうです……
今回は、北沢峠から山梨県側に10分程下った、唯一テン場のある長衛小屋でテント泊をしました。料金は一人一泊500円です。やすい!川砂利の地面でペグは刺さりにくいですが、大きな石がたくさんあります。水は無料。トイレは水洗でした。
欠点は空が狭いことくらいですかね。隣には沢が流れ、きれいなテン場で居心地が良かったです。また来たいと思わせるテン場でした。
長衛小屋テント場の規模は100張。右の写真の下にも敷地は広がります(奥の山は小仙丈ヶ岳)。
南アルプスの女王「仙丈ヶ岳」の生い立ち
仙丈ヶ岳の山頂付近には「カール(圏谷)」があります。
カールとは、穂高連峰の涸沢カールや立山の山崎カール*10等でよく知られていますが、山岳氷河の浸食による椀状の地形の事を言います。
約7万年前~1万年前の最終氷期に日本列島の山岳地帯では山岳氷河が発達していました。氷河が造る地形はいくつかありますが、仙丈ヶ岳には氷食によってカールが出来ました。南アルプスには仙丈ヶ岳の他に、間ノ岳、荒川岳、悪沢岳にもカールがあり、荒川岳のカールは日本最南端のものになります。
仙丈ヶ岳は山頂の周りにカールが3つ(大仙丈沢カール、小仙丈沢カールと藪沢カール)もあります。
これら3つのカールが仙丈ヶ岳を削ったことにより、穏やかな山容が造られました。その結果、仙丈ヶ岳は南アルプスの他の山々と比べ柔和で女性的な印象をもち、「南アルプスの女王」と呼ばれているのでしょう。
小仙丈沢カール(左)と藪沢カール(右)
藪沢カール底部、仙丈小屋の右下にある高まり(モレーン)は、氷河に削られ末端まで運ばれ堆積した砕屑物。
一方、仙丈ヶ岳を構成する石はおよそ数千万年前の砂岩主体で、他に粘板岩やチャートからなります。主に海に堆積した地層が仙丈ヶ岳を造ります。
では、海の地層からなる仙丈ヶ岳がなぜ標高3,000mを越え、山岳氷河を形成するほどの高峰になったのでしょうか?
それは、南アルプスが年間約4㎜以上の速さで隆起しているからです。
日本列島は4つのプレートがひしめき合う、世界でもまれに見る変動帯です。このプレートの運動により、南アルプスは世界でもトップクラスの隆起量を誇ります。また、周囲の地質調査から、南アルプスは約100万年前から隆起が始まったと考えられています。
余談ですが、日本三大崩れの一つ「大谷崩」が代表するように、この隆起量の為に浸食量も大きく、南アルプスは不安定な土地です。そのため、深層崩壊などの地滑りの危険性が高い地域とされています。
以上のように、約100万年前から続いた急速な隆起と数万年前の最終氷期の氷河による浸食によって、南アルプスの女王が誕生したのかもしれません。
おわりに
1日目は出発時刻が遅く、仙丈ヶ岳には午後2時頃に着きました。山頂の景色を楽しみ小仙丈ヶ岳に下る途中、物凄い勢いで登ってくるテン泊装備のお兄さんに会いました。
この時刻にこれからどちらに向かうのだろうと、あいさつの後に伺ってみると、両俣小屋のテン場に向かうとのこと。両俣はここから5時間以上先……。
さらに伺うと、朝は黒戸尾根から甲斐駒を登ってきたそうです。黒戸尾根は剱岳の早月尾根と並ぶ日本屈指の長丁場の急登。ちょっとやりすぎたと後悔の弁でしたが、楽しそうでした。体力あればこその山行ですね。
私には、ただただ感心・驚きでした(帰りのマイクロバスの運転手さんも絶句してました)が、 そんな体力も気力もない私はこれからもお気楽登山を楽しみたいと思います(笑)。
引用・参考文献
- 信州 山のグレーディング:長野県公式
- 長衛小屋をめぐる歴史:伊那市公式、市長 寄稿文・講話集
- 河内洋佑・湯浅真人・片田正人(1983)市野瀬地域の地質.地域地質研究報告(5万分の1地質図幅).地質調査所, 70p.(リンク、産総研地質調査総合センター)
- 【改訂版】南アルプス学概論(平成22年3月改訂):静岡市公式、南アルプス世界自然遺産登録
【四阿山】自分の登る山がどんな山か調べてみよう!【火山情報】
前回紹介した "We Banjo 3" のアルバム "Haven" にドはまりしていますが、彼らのドライブ感溢れる曲を聴きながら、先日は長野県と群馬県の境、上信国境の『四阿山』と『根子岳』に登ってきました!
この二つの山は以前活動していた火山であり活火山ではありませんが、周りには草津白根山(警戒レベル2)や浅間山など活発な活火山があります。これから活火山に登ることもあると思うので、気象庁が発表している火山情報について調べてみました。
※火山ガスなど幾つか追記しました(6/24)。
Contents
四阿山・根子岳(あずまやさん・ねこだけ)
前週にテン泊した常念岳からの四阿山の情景があまりにも印象的で、「これはいってみないと!」と思い立ち行ってきたのですが(百名山のハシゴですねw)、
左:四阿山(根子岳方面から)、右:根子岳(四阿山ー根子岳の鞍部から)
当日はまずまずの天気のもと、白樺と熊笹の登山道にツツジや山桜が咲き、目を楽しませてくれました。
しかし、一番楽しみにしていた草津白根山、浅間山方面の眺めは、雲に覆われてイマイチでした。残念。
登山道を歩いていた際、比較的新しい火山岩や火山地域によくみられるローム状の泥が目立ちました。
最近の文献を調べてみると、四阿山・根子岳は80万年前~30万年前に断続的に活動していた火山であり、火山活動後期において北方向に開いた崩壊地形が形成されたそうです(西来ほか、2014)。この崩壊のお陰で「米子大瀑布」があるのでしょうね。
「そういえば、この辺は浅間や草津などの活発な火山の狭間。これから登る山には活火山が含まれるかもしれないから、復習しておかないと!」
と思いましたので、今回の記事では、日本の活火山と気象庁の火山情報についても見てみたいと思います。
日本の活火山
世界には約1,500の活火山がありますが、日本には111もの活火山*1が分布し、実に世界の活火山の約8%が日本に集まります(日本の国土面積は地球の総陸地面積の0.25%)。
出典:内閣府
出典:気象庁
火山情報
気象庁では、これら111の活火山を対象として、「噴火警報・予報 表/図」を発表しています。
出典:気象庁
また、「気象庁|火山登山者向けの情報提供ページ」では、噴火警報発表中の火山と1週間以内に情報を発表した火山が示されています。下図では、6月21日に活動解説資料が発表された御嶽山が掲載されています。
出典:気象庁
主な活火山の噴火警戒レベル(2019年6月23日)
レベル3:桜島
レベル1:御嶽山など、上記以外の活火山(図には表記されていません)
※小さな島嶼部は除外。
噴火警戒レベルについては、下図のように5段階に細分化されます。
出典:気象庁
火山活動に伴う現象(出典:内閣府)
一口に火山と言っても、たくさんの形態の火山が存在し、またその噴火に伴う現象も様々です。下記は内閣府がまとめた危険性の高い火山活動による現象です(オレンジの文字は私のコメントです)。
1.噴火現象*2
2000年の有珠山噴火(マグマ噴火)は避難誘導がうまくなされ死者0。一方、2014年の御嶽山噴火は水蒸気爆発により戦後最悪の被害を出しました。
2.火砕流
高温のガス(数100℃)と火山灰・軽石等が山腹を高速(時速100㎞以上)でなだれ下る現象。
火砕流には主に2タイプあります。一つは溶岩ドームの崩壊によるもの。もう一つは噴煙柱の崩壊によって発生するもの。
1991年雲仙普賢岳噴火では前者の火砕流による被害が発生しました。2014年の御嶽山噴火では後者の火砕流が発生したそうです。
3.火山泥流
噴火による火口湖の決壊や融雪などにより発生した泥水が流れ下る現象。
1984年のアイスランドでは、氷河の下にあった火山が噴火し、氷河が融けて発生した泥流(ラハール)によって、日本の著名な火山学者が亡くなっています。この事故で亡くなられた柵山雅則先生は、火山の噴火メカニズムの研究において世界の第一線で活躍されていた方でした。先生の提唱したマグマ混合モデルは、現在も多くの研究者によって支持されています(私も度々引用させていただきました)。
4.津波
噴火に伴う山腹の崩壊によって生じた土石が海に流入したり、海底火山で大規模な噴火が発生したときに津波が発生することがある。
2018年12月のクラカタウ火山噴火・津波(インドネシア)や、1792年の島原大変肥後迷惑(眉山の山体崩壊に伴う津波)など。
他に、火山ガス(硫化水素、二酸化硫黄や二酸化炭素など*6)の危険性も。
火山ガスが日常的には一番危険かもしれません。
私の恩師は、火山地域を調査していた合間に自分たちで掘った温泉に入浴していたところ、硫化水素ガスによる中毒になりかけたそうです……(鼻まですれすれで入っていたら、急に視野が暗く……*7)。
このように火山ガスは空気よりも重いものが多いので、くぼ地(火口や石灰岩地域のカルスト地形のドリーネ等)などに濃集します。火山に限らず、周囲よりも低い地形に下りる際は気を付けましょう*8。
また、火山ガスは水溶性のものが多いので、濃度が高そうな時は、水で濡らしたタオル等で口や鼻を覆うと効果的な場合があります。
草津白根(むかーし、サンプル採取に同行した際に撮影)
以上のように、火山を登る際は、噴火だけでなく、火山活動によって引き起こされる様々な現象にも気を付ける必要があります。
登る山が火山であるか調べてみましょう
多くの被害を出した2014年の御嶽山噴火では、火山性微動が頻発していたにもかかわらず警報を引き上げなかった問題などもありますが、御嶽山が火山であることを知らない登山客もいたそうです。
政府や専門家による啓発活動も重要ですが、下界とは違い、登山は自然を相手にするのですから、それ相応の準備・対応が登山者にも求められます。
ですが、そんなことを言われても、
「これから登る山が活火山なのか?」
「もし活火山であった場合に、火山情報はどこで調べたらよいのか…?」
多くの登山者は、自身が登る山がどんな山なのか知らない、またはどのように知ることができるのか、その術を知らないことがあると思います。
そこで、活火山の情報は、以下の「気象庁の防災情報」や「日本気象協会の火山情報 tenki.jp」のウェブサイトが有用になります。
これらのサイトには、活火山の一覧とその警戒レベルが記載されています。
また、「気象庁|知識・解説 火山」や上記の「日本気象協会|火山情報 tenki.jp」では、それぞれの活火山の特徴が解説されており、噴火の規模・歴史や災害の例について知ることができます。
さらに、以下の地図では「噴火警戒レベルが運用されている45火山」を示していますが、
出典:気象庁
これらの火山には、ハザードマップを掲載したリーフレットが以下の気象庁のサイトで用意されています。
リーフレットには警戒レベルに応じた入山規制区域等が示されていますので、事前にダウンロードして目を通しておくと良いかもしれません(各自治体が用意している場合もあります)。
おわりに:登山計画を立てる時に…
以上、火山情報について述べてきましたが、安全な山行計画を立てる際に、以下の事を付け加えることをお勧めします。
- 自分の登る山が火山かどうか調べる。→気象庁|活火山とは
- 噴火警報・予報など火山情報を見る。→気象庁|火山登山者向けの情報提供ページ
- 時間があれば、リーフレット等を見て、その火山の規制範囲や特徴を知る。→気象庁|各火山のリーフレット(規制範囲) & 気象庁|知識・解説 火山 or 日本気象協会|火山情報(規制&特徴)
- 登山の際には、火山活動の各現象(特に火山ガス)に留意して登れたら言うことなし!
実際は2までで十分だと思います。
ですが、火山は恐ろしい一方で、様々な恩恵を我々にもたらしてくれます。その恩恵が日本の文化を育んできました。
防災の面だけでなく、せっかく山に登るのですから、その土地の風土に大きな影響を与えた山について調べてみると、登山の楽しみが広がるかもしれませんね。
レベル2に引き上げられる直前の箱根大涌谷(20190516 金時山より撮影)
引用文献
西来 邦章, 竹下 欣宏, 田辺 智隆, 松本 哲一(2014)中部日本,四阿火山のK-Ar年代:四阿火山の火山活動史の再検討. 地質学雑誌, 120巻, 3号, p.89-103.(リンク、J-STAGE)
図表の著作権について
【アイルランド音楽】2019年の『ケルティック・クリスマス』は行かない理由がないっ!【ケルト音楽】
最近、山ネタが多すぎる……
アイルランド伝統音楽……
人々の心を鼓舞しながらも、一方で哀愁を感じさせる旋律……
どこかしら我々日本人の心に通じるアイルランド音楽は、徐々に日本でもポピュラーになってきました。最近は芸大出身の方達を中心*2にアイルランド音楽ムーブメントが少しずつ浸透してきているようです。
その甲斐あってか、私はテレビを見ないのですが、たまに実家に帰ってテレビを付けると必ずといっていいほどアイルランド音楽を耳にします*3。
私の住む街のアイリッシュパブでも、夜な夜なギネスやキルケニーを飲みながら演奏に酔いしれる大学生の姿を見かけます。
こんなふうに、アイルランド音楽を耳にする機会が日本でも増えてきましたが、今年も半年が過ぎ折り返しを迎えます。アイルランド音楽好きであれば、そろそろ『ケルティック・クリスマス』(以下、ケルクリ)が気になるころです。
「ケルクリ」は東京の錦糸町にある「すみだトリフォニーホール」を中心に行われる年末恒例のアイルランド音楽イベントです。このイベントでは、必ずアイルランド音楽界の大物が出演し、その年の日本におけるアイルランド・イベントの締めとなります!
まだイベント自体は半年先ですが、来月7月から予約が始まります。
「今年は誰が来るのかな?」
とチラシを見直してみると、今年の出演アーティストは、
- タリスク
- We Banjo 3
- シャロン・シャノン
おお!これは体力が持たないかも(笑)
3グループとも、しっとりと聴かせる演奏も魅力的なのですが、アップテンポな曲で聴衆をグイグイ引っ張るライブが持ち味です。ケルクリで彼らの演奏を聴けば、虜になること間違いなしでしょう!
それでは、ケルクリの出演アーティストをみていきましょう。
☘ ケルクリ出演アーティスト ☘
1.Talisk(タリスク)
スコットランドの新進気鋭の伝統音楽/フォークバンドです。コンサーティーナ*4のMohsen Amini をリーダーにフィドル*5とギターを加えた3ピースユニット。Mohsen がアレンジした「燃えるようなドライブ感」溢れる演奏に、時間を忘れてしまいます!
繊細な旋律から徐々に……
リーダー個人名義の演奏も。アグレッシブでいて、癒しも忘れない。
私も彼らの演奏をまだライブで見たことないので、非常に楽しみです!
2.We Banjo 3(ウィー・バンジョー・スリー)
お次は、アイルランド期待のブルーグラス*6の4ピースバンドで、アイルランド音楽の本場 Galway*7出身。
初期の作品。素朴、だけどかっこいい
「あれ?バンド名に3とあるのに4人だよ?」
しかも、一人はギターでもう一人はフィドル。たまにバンジョーもマンドリンになってるし?
シャロンをゲストに賑やかに。こんな「どこでもドア」ほしい!w
名前からして不思議なバンドですが*8、二組の兄弟から構成されるバンドは演奏の息もぴったり合い、明るくもどこかしら哀愁漂う旋律、そして歌声&ハーモニーが魅力的です!甘いマスクも?w
最近の曲。ちょっと軟派?でも悪くないってか、好きカモ
私は、2015年のケルクリで初めて彼らのパフォーマンスを見てからのファンですが、技巧的な演奏だけでなく、MCも含め彼らのライブパフォーマンスは観衆を魅せます!
さらに、さすがアイルランドのコンペティションでチャンピオンになっただけあって、アイルランド音楽史にも造詣が深いです。
ライブ前のトークショーでは、1900年代初頭いかにアイルランド音楽がアメリカに渡りアイルランドに凱旋し帰ってきたか、1970年代の伝説的バンド "Planxty" が現在のアイルランド音楽にどのように影響を与えたのか等、興味深いお話に改めて驚きました*9。
3.Sharon Shannon(シャロン・シャノン )
トリは、全アイルランド国民460万人中、知らない人はいないと言っても過言ではない*10アイルランド音楽のカリスマ的アイドル、アコーディオン奏者「シャロン・シャノン」!
彼女も We banjo 3 と同じく音楽の都 Galway 出身。1991年にリリースされたファーストアルバム "Sharon Shannon" は、アイルランド国内の伝統音楽売り上げ歴代1位をいまだに維持しているそうです。
こんな旋律に魅かれる日本人多いはず。リフレインはずるいw
「スコットランドの吟遊詩人」とも形容される「ウォーターボーイズ」にも参加した彼女は、今月8日に51歳を迎えましたが、その変わらない外見的な「愛らしさ」だけでなく、演奏にも磨きがかかっているようです。
"Galway Girl" を歌えないアイルランド人はいない!(We Banjo 3も出演)*11
2013年の彼女が出演したケルクリでは、偶然にもアイルランド大使の真後ろの席で聴きましたが、シャロンが出演したとたんに大使は、あろうことかカメラを取り出し彼女を激写してました(笑)。彼女がいかにアイルランドでは特別な存在か、お分かりになると思います(笑)。
おわりに:アイルランド伝統音楽とは
クレアの知人が住む村のパブでのライブ
アイルランド伝統音楽は本来パブミュージックであり、だれもが参加できる大衆音楽です。
ステージ上で演奏される音楽を有難く拝聴するのではなく、演奏者と聴衆の間がとても近く、ときに聴衆がいつの間にか奏者になっていたり、場の雰囲気を共有するのがアイルランドの伝統音楽だと私は思っています。
私の行きつけの田舎のパブ。飛び入りの女性の歌声に……
アイルランドの行きつけのパブ。毎週水曜に伝統音楽ライブ。いい音楽 (*´ω`) #アイルランド音楽 #アイリッシュパブ #Sláinte pic.twitter.com/sEcqGJKd1Y
— Cashel (@Sliabh_Eire) June 18, 2019
暗いですが、パブでのライブ風景
ギネスあるいは私の大好きなエール Smithwick's を片手に、地元の方達が奏でる演奏や唄を聴き、演奏者たちや音楽を聴きに来た方達と語らい、楽しい時を彼らと共有することが、私の宝物の一つです。
Smithwick's(スミスィックス)! 日本でも飲めるようにならないかな~
今回の「ケルクリ」の出演者たちも、ステージを乗り越えて聞いてる者たちに演奏を通して語り掛け、あたかもパブで聞いているように錯覚させるのです!
はやく12月にならないかな~☘☘☘
アイリッシュ・ウィスキー"Bushmills" をちびちび、Haven by We Banjo 3 を聴きながら……飲みすぎかw ちょっと熱くなったw 失礼しました <(_ _)>
*1:イギリスの西にある北海道程の大きさ・人口の島国
*3:バラエティー番組、CMやゆるキャンなどのアニメのBGM等
*4:蛇腹楽器の一種。アイリッシュダンスの伴奏にもよく使われる
*5:バイオリン。アイルランド音楽やカントリー音楽等ではフィドルと呼ばれる
*6:アイルランドやスコットランドを源流とするアメリカの伝統音楽。カントリー音楽のジャンルの一つとして数えられることも
*7:ゴールウェイ:アイルランド西部の中心都市。人口8万人。音楽だけでなく、アラン諸島などの観光地でも知られる。ちなみに、私刑を意味する言葉「リンチ」は、この街で不祥事を起こした息子を独断で裁いた判事リンチ氏に由来するとも言われる
*8:フィドラー以外の3人がバンジョーを担当するので、We Banjo 3 なのです
*9:同席していたピーター・バラカンさんは、アイルランド音楽にあまり興味ないような印象でしたw もう少し勉強してからインタビューして!と思いましたw
*10:最近は移民が多いので、もしかしたら……
*11:あずき色の服を着た人たちやフラッグが見えますが、この色はGalwayカラーです(伝統スポーツなどで使います)。私のよく遊びに行く街はスカイブルー&ゴールドです
梅雨晴れの『常念岳』に久々のテント泊と初めての星景撮影!Jun 13-14, 2019
梅雨の晴れ間を狙い、常念岳へテン泊してきました!
久し振りの重い荷物は大変でしたが、苦労に見合う絶景が広がっていました!
今回は文章短め、写真多めです!
もう前置きめんどくさいし、早く写真を載せたいので…!!
なお、夜の部のみ三脚撮影です。
上の写真は、今年2月中旬に松本市城山公園から撮影したものです。右上のヘリは県警ヘリ?
※写真10数枚、地図、温泉情報を追記しました(6/16, 20:30)
※地質図も加えました(6/16, 21:15)
※改訂してたら文章増えた~w
Contents
常念岳の眺め!
常念岳をなめてました。ごめんなさい!
昼の部
以前、槍穂にしか目がなかった頃、常念岳は常に低く見えてあまりパッとしない印象でした(当たり前ですね)。ですが、逆から見ると、槍穂を眺める絶好のロケーションでした!
「本当にここ日本なの?」と思わせるほど、日本離れした景色が広がっていたのです!
ここに住みたいw
やり!
こっちから見ると傾いてない。
北穂と大キレット。
前穂、屏風ノ頭、奥穂。すり鉢状のくぼ地は涸沢カール。
石は穂高安山岩。その下には第四紀花崗岩(ウェストン碑周辺、明神の向こう側)。
乗鞍方面。
昔、明神岳に登った時にも思いましたが、上から見ると梓川の平坦面の異様さが際立ちます。周囲の山の大量の土砂供給と焼岳火山等の堰き止めによるものです。100万年程前はカルデラでした(地形は残っていません)。
前の週に登った燕岳。前景は横通岳、背景は針ノ木岳・蓮華岳や唐沢岳。
名残惜しや~
今夜は月夜……クッ
小屋とテン場、見えてきた! 奥の山は横通岳。
3張りか。静かなる夜。と思いきや、いびきが(笑)私も夜中ゴソゴソしてたし、お互い様かな……
ちょっと早いけど、ばんしゃく!
登り大変だったけど、最高の眺めをありがと~!
夜の部
星景写真は2回ほど練習しましたが、山では今回初めてです。数か月前に練習したので、設定を忘れてましたが……それでも撮れたのは、暗所撮影に強いカメラのお陰です。
それと、一眼レフのような本格的なカメラによる撮影は、今までの私の写真をご覧いただければお分かりのように、初心者の域です <(_ _)>
なお、Lightroom で現像しております。
今回の撮影時、月齢は十日夜の月でした。日の出2時間半前(午前2時頃)に月が没し、ようやく天の川が見えるようになりました。
月明かりの23時過ぎ、北穂高小屋に明かりが……
普段使いのレンズで撮影。しかもC-PLフィルターつけっぱなしww。ピントの目盛りがないので、ピント合わせるの大変でした。
午前2時。ようやく月が沈む。
常念岳の西斜面に天の川が!
天の川を挟んで、右の明るい星は木星で、左のやや明るい星が土星。
ここから3枚は魚眼レンズ。
松本側にカメラを向けると、天の川が天の架け橋のように!魚眼の写り方なかなか面白い!ピント目盛りも有り無限遠出すのも楽だし、広大な画角は星景向きかな。
槍穂にカメラを向けて。
天の川の下の明るい部分は、常念小屋の明かり。
お隣のテントを借景に
色々露出時間(iso6400、F値最大)を変えて撮りましたが、30秒以上だと星が流れてしまうので、露出時間は短め。現像しましたが、ちょっと暗めです。
アストロトレーサー(簡易赤道儀)を持っていきましたが、テントから薄氷がパラパラ落ちるほどの寒さの中、ぶんぶん振り回してキャリブレーションするズク*1はありませんでした……
カメラが重いので(それでもフルサイズよりも軽いですが)、ミニ三脚 Manfrotto PIXI EVO 使用。テント前で撮影する分には小ささは気になりませんでしたが、自由運台が欲しかったです。それでも、サイズ、価格と今回の撮影状況を考えると悪くはないと思いました。
朝の部
山行中は日没後の数時間を除き、晴れほぼ無風で穏やかな状況でした。
日の出は……下の写真を見てください!
日の出前、上信国境。
日の出。
槍見てたら、いつのまにか!(志賀高原の岩菅山と横手山の間かな?)
後を振り向くと、モルゲンロート!
(ことばにならない……)
(いかどうぶん……)
おはようございます<(_ _)>
常念乗越からほぼ全景。
四阿山。
浅間山。
美ヶ原高原。右端に蓼科山。その間に御座山。
八ヶ岳。諏訪の上空には雲海が。
次はあの山だ!(いや、もう少し待て……)
登山道の状況
常念岳へのルートはいくつかありますが、松本盆地から直接アプローチできる「一ノ沢登山道」を選択しました。
下記の危険個所に気を付ければ、体力のある初心者の方ならば経験者同伴で登れると思います。が、慎重に。
一ノ沢登山道*2の状況(6/13-14時点)
- 登山口の広場(1,320m)は駐禁。登山ポスト、トイレあり。
- 登山口から徒歩20分下流に駐車場二つ(1,220mと1,200m)あり、20‐30台の広さ。
- 登山口から最終水場(2,190m)までは主に一ノ沢沿い。何回か沢を渡るが、多くに丸太橋あり。ただし、橋の無い渡渉ポイント2ヶ所あり、雪渓直下の渡渉ポイントは特に気を付けたい。
- 1,970m付近から最終水場までは、夏道(左岸の斜面)ではなく雪渓(長さ500m、高さ200mほど)を歩く(6/13-14時点)。
- 最終水場から常念乗越までは、急な小尾根を開削したつづら折りの登山道(道のり1㎞、標高差200mほど)。
主な危険個所として4つ(6/13-14時点)
- ルート上部の雪渓
- 雪渓直前の渡渉ポイント
- 最終水場の直上のガレ
- 沢沿いの登山道(中下部全般)や丸太橋など
以下、詳説。
1.雪渓自体急傾斜ではない。しかし雪渓末端・両端や中央部は薄く、崩落の危険性あり。両岸から1/3の部分を歩くと良いと言われている。日光が当たり気温が上昇すると、雪が緩み滑りやすい。特に下山時。不安な方は軽アイゼンの携行を。また、所々に落石あり。落石発生時は雷のような音が鳴るが、雪渓を落ちる時は音が小さいので気を付けたい。やはり、気温の高い時に発生しやすい。落石から逃げる方法は、落石から目を逸らさないこと(だそうです。自分には出来る自信がない…)。ルート上は雪渓分岐や最終水場にはロープが張ってあるが、トレースが不明瞭で、目印の旗が倒れていることが多々あったので、ガスっているときは迷わないように。基本、雪渓分岐を右に登ればよい。右の斜面を高巻きする夏道はこの時点では無視。これから雪渓が融けてくると夏道も使うことになるので、下記の小屋番ブログを参照されたし。
左:下部末端、右:最終水場
2.緑のロープが渡してあり、水量が少なければ渡渉自体は楽だが、石を渡るときに滑らないように。増水時には十分注意を。
渡渉ポイントに緑のロープ。上の雪は登山ルートの雪渓末端部。
3.最終水場直上にガレた斜面が1ケ所あり、時折小石が降ってきた。木材で補強された登山道にも小石が沢山積もっていた。通行の際には落石に十分気を付けたい。
4.登山道の中下部は主に沢沿いで、ルート上に水が流れていることが多々あった。沢にかかる丸太の橋も小さいので、雨天時の増水にはくれぐれも注意を。
最新の情報は、常念小屋の「小屋番ブログ」でご確認ください。
常念乗越(常念小屋 2,466m)ー常念岳(2,857m)*3の状況
特に危険個所なし。ガイドのマークも多く、晴天の昼間であれば迷う危険性は低い。ただし、登山道には石が多いので浮石による転倒には気を付けること。また東の急斜面に迷い込まないように。
常念乗越から見えるピークは、偽ピークなので騙されないように!
登山道の石について
沈み込み帯の大陸側によくみられる付加体堆積物*4に花崗岩類*5が貫き、熱変成を与えている。このため、付加体堆積物は再結晶した細かい結晶からなり、直射日光の下でキラキラ輝く。
出典:産総研 地質調査総合センター発行の1/5万地質図幅「槍ヶ岳」「信濃池田」「上高地」「松本」。「引用文献」の項に詳細情報。地質図の二次利用については、こちらを参照。
なお、おもしろい模様の石があるかもしれませんが、登山道周辺は中部山岳国立公園の特別保護地区・特別地域となりますので気を付けてください。植物だけではなく、岩石採取も禁止されています(山菜取ってるおじさんいたけど……)。
とるなら、石や植物ではなく写真を!
左半分以上の白い部分が花崗岩。レンズキャップ右の黒い部分が付加体堆積物。
下山後のお楽しみ:おんせん!
「ほりでーゆー四季の郷」入浴料金:530円、営業時間:9:00-21:30(21:00受付終了)
里に下りて烏川を回り込みますが、「国営アルプスあづみの公園 (堀金・穂高地区) 」に隣接する森に囲まれた温泉宿泊施設です。露天風呂からは常念岳を望めます!周囲にはキャンプ場もありますよ。
おわりに
ほんっッとーーに、よかっっつた!!!
以上! <(_ _)>
使用機材(カメラ関連)
- PENTAX KP | RICOH IMAGING
- HD PENTAX-DA 16-85mmF3.5-5.6ED DC WR | RICOH IMAGING
- smc PENTAX-DA FISH-EYE10-17mmF3.5-4.5ED[IF] | RICOH IMAGING
- PIXI EVO 5段階調節ミニ三脚 | Manfrotto
引用文献
- 原山 智(1990)上高地地域の地質.地域地質研究報告(5 万分の 1 地質図幅),地質調査所,175 p.(リンク、産総研地質調査総合センター)
- 原山 智・竹内 誠・中野 俊・佐藤岱生・滝沢文教(1991)槍ヶ岳地域の地質.地域地質研究報告(5万分の1地質図幅).地質調査所, 190p.(リンク、産総研地質調査総合センター)
- 加藤碩一・佐藤岱生(1983)信濃池田地域の地質.地域地質研究報告(5万分の1図幅), 地質調査所, 93p. (リンク、産総研地質調査総合センター)
- 加藤碩一・佐藤岱生・三村弘二・滝沢文教(1989)大町地域の地質.地域地質研究報告(5万分の1地質図幅).地質調査所,111p.(リンク、産総研地質調査総合センター)